今日は一学期の修了式だ。

明日からはいよいよ夏休みが始まる。

「明日から、長期休暇に入るが、くれぐれも事故や怪我などないように」

高峯がそう言って、ホームルームは終わった。


「見て、夏祭りだって」

春香と一緒に歩いていた真白は夏祭りのチラシを見つけた。

「八月末にやるんだ。結構先だね」

「今年はかなり盛大にやるらしいぞ」

高嶺がやってきた。

「俺も見回りで祭りに行くんだ」

「そうなんですか?」

「人の多いところは苦手なんだけどな」

そう言って歩いて行った。

「ねぇ、夏祭り、行ってみない?」

春香が言った。

「え?でも、大丈夫なの?」

「何が?」

「その、叔母さん…」

叔母は、門限に厳しかった。

今まで一度も子供だけで遅い時間まで出歩かせたことはない。

「平気だよ。もう高校生なんだし、友達大勢誘えば大丈夫でしょ?」

「え?大勢?」



「夏祭り?」

二人は、最初に花蓮、天音、結奈に声をかけた。

「うん。一緒に行かない?」

「うん。いいよ」

花蓮と結奈は頷いたが、天音は気まずそうにしている。

「天音は?」

「私は…」

「大丈夫。一緒に私たちがそばにいるから」

花蓮と結奈の二人が言った。

次は要と紫音に声をかけた。

「一緒に行かない?」

「いいよ」

「どうせ暇だしな」

「後は…隼人にも声をかけたいんだけど、どこにいるんだろう?」

前から湊と隼人が歩いてきた。

「あれ?二人でどうしたの?」

真白が聞いた。


「少し湊さんに用事があったんだ。二人の方こそどうしたの?」

「夏祭りがあるから一緒に行こうと思って。生徒会長もどうですか?」

「俺も一緒に行っていいの?」

「はい。ぜひ」

「ありがとう」

真白は春香に家まで送ってもらった。

「じゃあ、またね。寂しくなったら呼んでいいよ」

「あはは。ありがとう」


湊は、家に帰ってきた。

「今日は先に帰ってたのか。今度、夏祭りがあるけど、お前も一緒に来るか?」

白髪の少年は、ニコニコ笑って頷いた。


真白は、屋敷に帰ってから琥珀たちに夏祭りの話をした。

「その日はこの世ならざるものがあの世からやってくる日だぞ」

「そうなの?」


「ちょうどいろいろなことが重なる日だな。そう言った日は、この世のものではないものたちにとっては、霊力や妖力が高まりやすい。友引や十三の日にち、不吉なものが揃っているな。その夏祭りとやら、私たちも付き合おう」

高嶺の部屋でスマホが鳴った。

「もしもし?あぁお前か。どうした」

火にかけたやかんがシューッと音を立てている。

高嶺は火を止め、カップにインスタントのコーヒーを入れてお湯を注いだ。

「久しぶりにこっちに来るのか」

高嶺はコーヒーを持ってリビングのソファに座った。

「わかった。またな」

そう言って電話を切った。