「俺もついこないだ知ったんだ。ずいぶん急だと思ったよ。親が出張で家を開けるから、湊に住める部屋が空いてないか聞いていたらしい」

「え?隼人、湊さんの家に住むんですか?」

湊の家は神社で、先祖代々続いている由緒正しい家系だ。

退魔師の仕事も受け持っていて、他の神社や寺の人間が修行に来ることも多い。

「それだと隼人が気を使うだろうから、別のところも探してやっているらしいが…」

「待て!」

廊下から、紫音の声が聞こえた。

「ん?なんだ?」

廊下を見ると、紫音と花蓮が走ってきた。

「要!そいつ捕まえてくれ!」

床を見ると邪気がこっちに向かってきた。

お札を取り出して投げつけた。

邪気は跡形もなく消えた。

「はぁ…はぁ…」

二人が息を切らして座り込む。

「また出たのか」

この前も一匹出たばかりだ。

「職員室にいく途中にいたんだ」


「生徒会室にいないなら、高嶺先生のところにいるかも」

真白の声が聞こえた。

隼人と歩いてやってきた。

「美術室に返しに行かないと」

「この先でしょ?」

その反対からは結奈の声と春香の声が聞こえてきた。

天音が国語準備室にいる一行を見つけた。

「こんなところで群がって、どうしたの?」

花蓮が説明する。

「今邪気が出たからの追いかけてたの」

「私たちのところにも出たけど」

結奈が言った。

「え?」

「図書室にもいた」

真白も口を開いた。

「どう言うこと?なんでそんなに邪気が出てくるの?今までこんなことなかったよね?」

花蓮が言う。

「おそらく、大きなあやかしが近づいてきているんだろう。あるいはよくないものが現れたのかもしれない」

高嶺が言った。

真白は春香に視線をうつした。

「春香はなんでここにいるの?」

「え?私は…あ!部活もう終わってる…」

「本条さんは、俺といた時に邪気に遭遇したんだよ。君にも霊力があるんだね」

湊が春香見ていった。

「えっと、霊感みたいな感じですか?確かにそれは前からありました」

「え⁈」

真白は驚いた。

おかしなものが見えるのは自分だけだと思っていた。

「でも、真白にも見えてたんだね。だったら、言っておけばよかった。前の犬が見えたって言った時に高嶺先生が驚いてたのは、あの犬が普通の犬じゃなかったからですよね?」

「そうだ」

「ここにいる全員がその霊力ってのがあるの?」

春香が真白に聞いてきた。

「うん」

「よかった。わたしだけじゃなかったんだ」

春香はほっとしたような顔をした。