「生徒会長⁉︎すみません!」

「本条さん?いいんだ。怪我はない?」

「私は大丈夫です。生徒会長は大丈夫ですか?」

「俺も大丈夫。よかった。俺が生徒会長だってことわかっててくれて」
 
「すみません。この間まで気づきませんでした」

思い返せば、入学式の時に祝辞を読んでいた気がする。

春香はそう言って頭を下げた。

「いいよ。謝らなくて。じゃあ、気をつけてね」

そう言って別れようとした。

突然春香の目の前を黒いものが横切った。

「え?何、今の」

一瞬だったのでよく見えなかった。

「どうしたの?」

湊が春香の元に戻った。

「今何か黒いものが…」

床に、邪気がいた。

「なにこれ?」

春香は邪気を見て言った。

「本条さん、これが見えるの?」

「え?何言ってるんですか?」

その時、邪気が逃げ出した。

「あ、待て!」

湊は、逃げた邪気を追いかけた。

「待ってください!」

春香も湊の後を追いかける。

向かいから、天音と結奈がやってきた。

「天音、結奈、その邪気捕まえて!」

「え?」

二人ともキョトンとした顔をしている。

「早く!」

「は、はい!」

結奈が持っていたバケツを邪気に被せた。

「これ、どうするんですか?」

「バケツを少しだけ傾けて」

湊は、柊の葉を取り出して邪気に押し付けた。

邪気は消えていった。

「い、今の何…?」

春香が驚いた顔をしていた。

「驚かせて、ごめんね」

「あ、あなた、春香ちゃん?真白のいとこの…」

天音が言った。

「そ、そうだけど…」

春香は知らない人に声をかけられて驚いていた。

「私、藍田天音、こっちは青野結奈」

「よろしく」


紫音と花蓮は、まだ教室に残っていた。

「日誌書くの、終わったか?」

「書けた」

花蓮がシャーペンを机においた。

「じゃ、職員室持ってって、そのまま帰るか」

二人は教室を出て職員室に向かった。


「ねぇ、この学校の職員室って遠くない?」

「俺たちの教室が、職員室から遠いんだ。俺たちの教室が一番奥にあって、職員室が校舎に入ってすぐ手前にあるからな」

歩くとかなりの距離があった。

「この暑いのにこれ以上汗かきたくないんだけど」

「これ置いたら帰れるんだから、文句言うなよ」

廊下は教室に比べて蒸し暑い。

しかも、今二人がいるところは一番日が当たる場所だった。

「ん?なんかあそこだけ暗くないか?」

紫音が指さして言った。

日当たりが良くて影なんかできる場所はないのに、一箇所だけ暗くなっているところがある。

「ほんとだ」

だがその影は、一人で動き出した。

「邪気か!」

二人は走って追いかけた。


「高嶺先生。クラス分のノート、持ってきました」

要は、国語準備室にいる高嶺のところに来ていた。

「あぁ。机に置いてくれるか?」

要がドサッとノートを置く。

「高嶺先生」

「なんだ?」

「隼人が来ること、知ってたんですか?」