真白(ましろ)はそこで目を覚ました。

「また…あの夢」

真白には、前世の記憶がある。

前世の時の名前は彩葉。

前世の記憶が戻ったのは7歳の時。

「学校、行かなきゃ…」

真白は布団から起きて制服に着替えた。

「行ってきます。お父さん、お母さん」

飾られた写真には、両親が写っている。

真白の両親は、真白が六歳の時に亡くなった。

それ以来、真白は親戚の家に引き取られ、暮らしていた。

「おはよう…叔母さん」

真白は小さな声で、リビングにいた叔母に挨拶をした。

「ああ、起きたのね。朝ごはん、そこにあるから食べてね」

「うん、ありがとう…」

「それと、春香(はるか)起こしてくれない?あの子、いつまでたっても起きないから」

真白は春香の部屋の前に立った。

ドアを二回ノックする。

「春香ー?起きてる?朝ごはんできてるよ」

呼びかけても返事がないので、部屋まで入った。

ベッドには布団にくるまって眠っている春香がいた。

真白は春香の体を揺さぶった。

「春香、起きて。学校遅刻しちゃうよ」

「うん…あと五分」

そう言ってなかなか起きようとしない。

「そんなこと言ってもダメ」

真白は無理やり布団をひっぺがした。

「ひどい真白、私はまだ眠いのに…」

ぶつぶつ文句を言いながらも、起き上がった。

真白と春香は食卓についた。

真白の朝食はトースト一枚に対し、春香はスープにサラダ、ヨーグルトまでついている。

「また、真白トーストだけなの?お母さんなんで同じのにしないんだろう?」

春香が小声で言った。

台所に立っている叔母には聞こえていないようだった。

「私の少し食べていいよ」

「え?でも…」

春香が自分の朝食を指差す。

「私、朝からこんなに食べられないから」

にっこり笑って言った。

この家に真白の味方は春香だけだ。

真白の叔父と叔母は、真白を引き取ってはくれたものの叔母の態度は冷たかった。 

それは何故だかわからない。

何かしてしまったんだろうか。

真白の両親が亡くなったのも、お前が呪われているからだと言った。

そんなふうに扱われたせいか、学校でもうまくいかず友達がなかなかできなかった。


そんな中、真白に優しくしてくれたのが春香だった。

『私は真白の味方だから』

その言葉に真白は救われた。

そのおかげで、学校でも話せるようになり、友達もできた。

朝食を食べたあと、真白と春香は家を出た。

学校に着く頃には、ギリギリだった。

「なんとか遅刻せずにすんだね」

「うん…」

走ってきたせいで息切れになった。

席に着いたところでちょうどチャイムが鳴った。

「それじゃあ、出席取るぞ」

担任の高嶺(たかみね)が教室に入ってきた。

高嶺は、二十五歳とまだ若く顔立ちが整っていることもあり、女子生徒から人気が高かった。