『真白。一緒にあそぼう』

真白と同い年の少年が尋ねてきた。

『隼人、今日は何して遊ぶの?』

『今日は秘密の場所を教えてあげる。みんなには内緒だよ』

そう言って連れてこられたのは花畑だった。

『お花がたくさん!綺麗』

真白には、幼馴染がいた。

家が隣で、同じ幼稚園に通っていた。

しかし、両親をなくし、親戚に引き取られるのが決まり、引っ越してしまった。

それから一度も会えていない。


「おい」

少年のような声が聞こえる。

「おい、起きろ」

体を揺さぶられて、真白は目を開けた。

体を揺さぶっていたのは黒い服を着た少年だった。

(誰?)

家に見知らぬ男がいる。

真白は飛び起きた。

「あなた誰⁉︎どうやって入ったの?鍵はちゃんと閉めたのに!」


「なんの騒ぎだ」

琥珀が部屋に入ってきた。

「琥珀!泥棒がきたならなんで追い払ってくれなかったの!」

見知らぬ人間を家にあげるなんてありえない。

「何を言っている。そいつは昨日お前が帰ってきてからずっと屋敷にいたぞ」

「え?」

真白は少年を見つめた。

少年は呆れた顔をしている。

「わからないのか?」

少年が狗神の姿に変わった。

「え…朱里?」

「朱里は私と同様、人に姿を変えられる。伝え忘れた」

琥珀が説明した。

「そうなの?」

その時、インターフォンが鳴った。

「真白、おはよう」

要が立っていた。

「神崎くん。こんなに朝早くどうしたの?」

「学校まで一緒に行こうと思って。昨日倒れちゃったから」

心配して家まできてくれたらしい。


「あと少しで夏休みだね」

学校までの道のりを二人で歩いた。 

今は、六月の末、夏休みも目の前だ。

「退魔師の残りの一人も夏休み中にこっちに来るんだって」

真白は六人いるうちのあと一人に会えていなかった。


「そうなんだ」

そんな話をしていると、学校に着いた。

「真白、おはよう」

昇降口に春香がいた。

「あれ?神崎くんと一緒だったの?」

隣にいる要を見て言った。

「あ、来る途中で会ったの」

真白はそう言って誤魔化した。

「そうなんだ。真白、教室まで一緒に行こう」

「うん」

「昨日ね、学校に野犬がいたの。すごく大きな犬でね…」

真白はその言葉に違和感を覚えた。

(あやかしは普通の人には見えないはずじゃ…)

でももしかしたら違う犬かもしれない。

「それってどういう…」

真白が聞く前に、他の友達に話しかけられた春香は、そっちに行ってしまった。


放課後、真白は剣道部の部室を通りかかった。

「一本!」

周りから歓声が上がる。

「あの一年ほんとすごいよな」

「赤坂だろ?体験入部の時に主将から一本取ったっていう…」

(赤坂?)

前に春香がそんな話をしていた。

(その一年って赤坂くんのことだったんだ)

「柏木」

名前を呼ばれて振り返った。

高嶺が立っていた。

「高嶺先生」

「少しいいか?」


真白は、国語準備室にやってきた。