「やば…」

顔がみるみる青ざめていく。

「紫音、大丈夫だ。この子は柏木真白。さっき話しただろ?」

「柏木、真白?お前が?」

紫音が真白の前にしゃがみこんだ。

「こいつが?あの彩葉の生まれ変わり?」

じっと真白の顔を見た。

「確かに顔は似てるな。でも力は使えるのか?」

「それはまだわからない。本人に自覚がないだけかもしれないし…」

紫音は立ち上がった。

「ま、それはさておき、とりあえず戻った方がいいよな。あ、俺は赤坂(あかさか)紫音だ」

それだけ言うと、さっさと歩き出した。

「真白も、一緒にきてくれる?」

真白が連れてこられたのは、今は使われていない旧校舎だった。

かなり老朽化が進んでいるため、近づく生徒はあまりいない。

「ここ、勝手に入って大丈夫なの?」

旧校舎に入る時は先生の許可が必要だったはずだ。

「大丈夫、許可はとってあるから」

そう言ってドアを開けた。

「あ、やっと戻ってきた」

「紫音が追っかけまわしたせいで外に出た邪気、ちゃんと祓えた?」

「あぁ、要が祓ったから大丈夫だよ」

「ならよかった」

そこには三人の女子生徒がいた。

「ところでその子誰?」

三人の視線が真白に向けられた。

要が口を開いた。

「この子はさっき話した柏木真白」

「よ…よろしくお願いします」

とりあえず真白は頭を下げた。

「え?この子が?」

そう言ったのは黒いロングヘアの女の子だった。

「あ、私白井花蓮(しらいかれん)よろしく」

髪が肩まである女の子も笑顔で言った。

「私は青野結奈(あおのゆな)。よろしく。でこの子が…」

ポニーテールの女の子も笑顔で言った。

藍田天音(あいだあまね)。よろしくね!」

思ったよりフレンドリーな人たちだった。

「今いるのはこの四人。あとは別の学校にいるんだ。近いうちにこっちにくるって言ってたから、会えると思うよ」

自己紹介が済むと、要が締め括った。

(この人たちが、退魔師…)

見たところ普通の人たちに見えるが、さっきのことがあるので、そうではないのだろう。

「ところで高澤先生は?ここにこいって言ったのあの人だよね?」

天音が機嫌悪そうにいった。

「確かに、もう三十分くらい待ってるけど全然来ないね」

鈴も時計を見て言った。

「どうせまた忘れてるんじゃないの?前だってそうだったじゃん」

花蓮が言った。

「忘れてなんかいない。お前ら、俺をなんだと思ってるんだ」

高嶺がドアに寄りかかって立っていた。

「じゃあなんで三十分も遅れてくるんですか!」

「俺が引き留めんだ」

一人の男子生徒がやってきた。

「生徒会長!」

真白は微かに顔に見覚えがあった。

(入学式の時に祝辞を読んでた人だ)

だが名前が思い出せない。

「はじめまして。柏木真白さん。桜咲湊(さくらざきみなと)です」