真白が見ていた夢はいつも同じで、今までと違う夢を見たのはあの桜を見たあとだった。

なので、あの夢がいつの日の夢なのかわからずにいた。

「もしかして、知らなかった?」

「うん」

真白の反応を見ておかしいと思ったのだろう。

要が話すのをやめて真白に尋ねた。

「私が今まで見た夢は、神崎くんがいま言った屋敷が襲われた日と、彩葉が夜に桜を見ている時に白夜が部屋にやってくるところだけ」

「そうか…今までそれだけしか見なかったの?」

「桜を見ている夢は、昨日屋敷に来た時に、桜の木を見て、突然倒れた時に見たの」

要が手を口元に当てた。

「屋敷にきたことで、刺激を受けて、前世の記憶が戻りやすくなってるのかも」

この屋敷は、なぜか初めてきた感じがしなかった。

まるで、前にきたことがあるような感覚があったのだ。

「これからもっといろんなことを思い出すと思うよ。あの五人に会えば、きっと、巫女の力も取り戻せると思うよ」

「五人?四人じゃなくて?」

さっき要は四人と言っていたはずだ。

「俺たちと同じ学校に通っているのは四人なんだ。もう1人は他の学校に通ってる。彩葉に仕えていたのは白夜の他に五人いたんだよ」

(そんなに…)

それだけの従者がいるのだから、彩葉は確かに姫巫女だったのかもしれない。

「さぁ、今日はこれくらいにして戻ろう。あんまり色々動き回ると迷いそうだから」

二人は、来た道を戻って行った。


「じゃあ、そろそろ帰るね」

お昼を過ぎたあと、要は帰って行った。

「やっと帰ったのか、あの小僧は」

「琥珀、今までどこにいたの?」

いつのまにか琥珀が姿を見せた。

「野暮用があったんだ。それよりも部屋は片付けなくていいのか?」

「あっ」

部屋の荷物はそのままだった。

午後は、荷物を片付けるので終わってしまった。


その夜。

屋敷の外に一人の人影が見えた。

「この屋敷から巫女の気配がする。そうか…ようやく戻ってきたのか…」