ミレイアが飛空艇で、シャルロ王国に向かっている時──。
ミレイアが追放されたエクセン王国では、盛大な「任命の儀式」が行われようとしていた。
『エクセンの国民! 私に注目なさい!』
ジェニファーは、エクセン城のベランダから、魔導拡声器を使って叫んだ。
『皆の者、私に跪くが良い! そして、私がこれからする偉大な功績を、永遠に語り継ぐのです!』
ベランダ下の広場に集まったのは、1万人のエクセン王国国民。彼、彼女らは、ジェニファーの任命の儀式を見ていた。
国民はジェニファーが、どんな役職につくのか、まったく知らされていない。
「なんだ? どんな発表があるんだ?」
「さあ……?」
国民はレドリー王子の婚約者、ジェニファーに対しての大発表を、首を長くして待った。
そして、彼女の隣に立っていたレドリーの老執事、ドヨモット氏の声が響いた。
『レドリー王子の婚約者、ジェニファー・ドミトリーに重要な任務を与える! ジェニファー・ドミトリー! おぬしに〈軍隊指揮官〉の任務を与えよう!』
ええええええー?
エクセン王国国民は、驚きの声を上げた。
弱冠17歳のジェニファーは、レドリー王子の婚約者というだけで、すさまじく高い地位にのぼりつめてしまったのだ。17歳の少女が、国の軍隊を率いるのだ。
『ホホホ! 良くってよ!』
ジェニファーはご満悦で、ベランダから魔導拡声器を使い、声を上げた。
『ミレイユなんかに負けてたまるもんですか! 元聖女が何だっていうのよ。私の軍隊が、魔物を蹴散らしてくれるわ!』
ジェニファーはこの間、対ポイズンモンキー戦のことなどすっかりわすれていた。
ちなみに、王は病気がちで寝込んでいた。すべてレドリー王子のはからいで、このジェニファーの任命は適当に決められたことだった。
民衆は首を傾げるばかりだった。
「聖女のミレイアを追い出しちゃったんだろ? 結界なしで、大丈夫か?」
「いや、ジェニファー率いる軍隊が、魔物を倒してくれるさ。だから大丈夫だろ」
そんな演説の最中、レドリー王子はというと……。城下町の酒場で女性をナンパしていたのだが。
◇ ◇ ◇
さて、ジェニファーは大演説を終えて、さっそく与えられた軍隊指揮官の執務室に行った。
すぐに、副隊長ゴーバスが、あわてたように入ってきた
「大変です、ジェニファー様!」
「ゴーバス! ノックはどうしたの!」
「いや、申し訳ない、それどころじゃないもんで。東のラディアル山に、オーガ2匹が現れました!」
「オーガ族? オーガ族ってなに?」
「あ、が、が……」
ゴーバスは頭を抱えそうになった。この小娘は、オーガ族も知らんのか。身長4メートルはある、鬼の魔物だ。そいつが2匹もいる! オーガは恐ろしい魔物だ。とにかく馬鹿力があり、体力もある。
「オーガは強力な魔物です! ラディアル山から、城下町の方に移動してくると思われます!」
「えっ? こ、ここに? やばいじゃないの!」
「そのとおりです! ジェニファー様、ご指示を……」
「えーっと……じゃあ、兵士8名で、オーガを討伐しなさい!」
「は、8名では無理ですよ。16名はいないと」
「私の護衛がいなくなっちゃうじゃないの!」
ジェニファーは舌打ちした。
「8名で十分でしょ。しょうがない、初任務だから、私も行くわ。ゴーバス、あんたも来るのよ」
「も、もちろんです」
ジェニファーとゴーバス、そして8名の兵士たちは馬車に乗り込んだ。2時間後、城から20キロメートル離れた、ラディアル山のふもとにやってきた。
「あ、あいつらなの? オーガって?」
ジェニファーは声を上げた。
いる。オーガがいる。頭に角の生えた、筋肉質の魔物だ。肌の色が青いオーガと、赤いオーガがいる。
で、でかい! 身長4メートル以上ある巨大な魔物だ!
ドガアアッ
バキイッ
2匹のオーガは、農村の家々を、棍棒で叩き壊していた。
すさまじい音だ。村人は村の入り口の方に避難している。
「なんとかしてくだせえ、ジェニファー様!」
「たすけてください!」
村人はジェニファーを見て懇願した。
「よーし! 兵士ども、さっさとオーガに突撃!」
ジェニファーは命令を下した。
兵士8名は顔を見合わせていたが、意を決してオーガたちに突撃していった。
パンッ
先頭の兵士2名が、巨大な青オーガの平手で、はね飛ばされた。
ガシッ
次の2名が、赤オーガに蹴り飛ばされた。
スタタタッ
残った4名の兵士は、村の入り口の方に、逃げ出した。
「ほへ?」
ジェニファーは口をあんぐり開けていた。
ミレイアが追放されたエクセン王国では、盛大な「任命の儀式」が行われようとしていた。
『エクセンの国民! 私に注目なさい!』
ジェニファーは、エクセン城のベランダから、魔導拡声器を使って叫んだ。
『皆の者、私に跪くが良い! そして、私がこれからする偉大な功績を、永遠に語り継ぐのです!』
ベランダ下の広場に集まったのは、1万人のエクセン王国国民。彼、彼女らは、ジェニファーの任命の儀式を見ていた。
国民はジェニファーが、どんな役職につくのか、まったく知らされていない。
「なんだ? どんな発表があるんだ?」
「さあ……?」
国民はレドリー王子の婚約者、ジェニファーに対しての大発表を、首を長くして待った。
そして、彼女の隣に立っていたレドリーの老執事、ドヨモット氏の声が響いた。
『レドリー王子の婚約者、ジェニファー・ドミトリーに重要な任務を与える! ジェニファー・ドミトリー! おぬしに〈軍隊指揮官〉の任務を与えよう!』
ええええええー?
エクセン王国国民は、驚きの声を上げた。
弱冠17歳のジェニファーは、レドリー王子の婚約者というだけで、すさまじく高い地位にのぼりつめてしまったのだ。17歳の少女が、国の軍隊を率いるのだ。
『ホホホ! 良くってよ!』
ジェニファーはご満悦で、ベランダから魔導拡声器を使い、声を上げた。
『ミレイユなんかに負けてたまるもんですか! 元聖女が何だっていうのよ。私の軍隊が、魔物を蹴散らしてくれるわ!』
ジェニファーはこの間、対ポイズンモンキー戦のことなどすっかりわすれていた。
ちなみに、王は病気がちで寝込んでいた。すべてレドリー王子のはからいで、このジェニファーの任命は適当に決められたことだった。
民衆は首を傾げるばかりだった。
「聖女のミレイアを追い出しちゃったんだろ? 結界なしで、大丈夫か?」
「いや、ジェニファー率いる軍隊が、魔物を倒してくれるさ。だから大丈夫だろ」
そんな演説の最中、レドリー王子はというと……。城下町の酒場で女性をナンパしていたのだが。
◇ ◇ ◇
さて、ジェニファーは大演説を終えて、さっそく与えられた軍隊指揮官の執務室に行った。
すぐに、副隊長ゴーバスが、あわてたように入ってきた
「大変です、ジェニファー様!」
「ゴーバス! ノックはどうしたの!」
「いや、申し訳ない、それどころじゃないもんで。東のラディアル山に、オーガ2匹が現れました!」
「オーガ族? オーガ族ってなに?」
「あ、が、が……」
ゴーバスは頭を抱えそうになった。この小娘は、オーガ族も知らんのか。身長4メートルはある、鬼の魔物だ。そいつが2匹もいる! オーガは恐ろしい魔物だ。とにかく馬鹿力があり、体力もある。
「オーガは強力な魔物です! ラディアル山から、城下町の方に移動してくると思われます!」
「えっ? こ、ここに? やばいじゃないの!」
「そのとおりです! ジェニファー様、ご指示を……」
「えーっと……じゃあ、兵士8名で、オーガを討伐しなさい!」
「は、8名では無理ですよ。16名はいないと」
「私の護衛がいなくなっちゃうじゃないの!」
ジェニファーは舌打ちした。
「8名で十分でしょ。しょうがない、初任務だから、私も行くわ。ゴーバス、あんたも来るのよ」
「も、もちろんです」
ジェニファーとゴーバス、そして8名の兵士たちは馬車に乗り込んだ。2時間後、城から20キロメートル離れた、ラディアル山のふもとにやってきた。
「あ、あいつらなの? オーガって?」
ジェニファーは声を上げた。
いる。オーガがいる。頭に角の生えた、筋肉質の魔物だ。肌の色が青いオーガと、赤いオーガがいる。
で、でかい! 身長4メートル以上ある巨大な魔物だ!
ドガアアッ
バキイッ
2匹のオーガは、農村の家々を、棍棒で叩き壊していた。
すさまじい音だ。村人は村の入り口の方に避難している。
「なんとかしてくだせえ、ジェニファー様!」
「たすけてください!」
村人はジェニファーを見て懇願した。
「よーし! 兵士ども、さっさとオーガに突撃!」
ジェニファーは命令を下した。
兵士8名は顔を見合わせていたが、意を決してオーガたちに突撃していった。
パンッ
先頭の兵士2名が、巨大な青オーガの平手で、はね飛ばされた。
ガシッ
次の2名が、赤オーガに蹴り飛ばされた。
スタタタッ
残った4名の兵士は、村の入り口の方に、逃げ出した。
「ほへ?」
ジェニファーは口をあんぐり開けていた。