「小説。ここ、いい場所だな。潮風が気持ちいい」

瀬戸くんとは、学校ではあまり話したことがなかった。

いつも自分の席に座って本を読んでいる。おとなしい感じの人だった。

「でしょ?私のお気に入りの場所なの。そう言ってもらえて。嬉しい」

私は、そう言って笑った。 

「でも、山下がいるとは思わなかった。もしかして俺、山下の場所取っちゃった?」

私は首を横に振った。

「ここは、私だけの場所じゃないから。そんなこと考えなくていいよ」

「ありがとう」

優しい顔で笑ってくれた。