暑い夏の日のこと。

私は海が見える海岸までやってきた。

潮風が気持ちよく、お気に入りの場所だ。

いつもは人がいないこの場所に、今日は一人、先客がいた。

手には本を持って、熱心に読んでいる。

近づいてみると、それはクラスメイトの男子だった。

「瀬戸くん!」

「うわぁ!」

勇気を出して話しかけると、おおげさなくらいに驚いた。

「あはは。ごめんごめん。そんなに驚くと思わなかったから。それ、何読んでるの?」

私は瀬戸くんが持っている本を指差した。