駅では皆が“僕”待っていてくれた。
「ただいま!」
僕がそう言って近づくと涼と遥希は
「おかえり、遥。遅いよ!」
と言って歓迎してくれた。僕は九月から元の学園に再編入し、生活を始めた。しばらくして爺ちゃんからきた手紙によると親戚一同集まってパーティーを開催するそうで、僕は参加すると返事をし、参加者の欄に母と涼と遥希も分も含めて4人で申請した。
 当日、家の前で二人と待ち合わせるとロータリーまで向かい、車に乗り込んだ。すると新垣が助手席からこちらを向いて挨拶を始めた。
「桜様、お久しぶりでございます。そして涼様遥希様、お初にお目にかかります。私、遥様の専属執事の新垣と申します。今宵は屋敷を我が家と思ってお楽しみください。」
涼も遥希も緊張しているのか硬い笑顔で固まってしまった。僕は二人になんて声をかけようか迷い、結局黙った。沈黙が続き、眠くなってきたなと思っていた頃涼が不意に言った。
「花火、、、。」
「「え?」」
僕と遥希の声がシンクロした。
「たしかに、、、。花火、今年はやってないな。」
僕は頷いて運転手に近くのワンストに寄るように言った。新垣は混乱していたが僕らは構わず車から降りると店先でじゃんけんをした。
「「「じゃんけん、ほい!」」」
二人が勝って僕は負けた。
「遥ーデカいやつね!」
「遥くん、お使いできるかな?」
とか二人の茶化す声を背中に僕は店に入った。花火コーナを探していると突然声をかけられた。よく見ると昔からお世話になっているこの店のスタッフさんだった。おすすめの花火を聞くと快く教えてくれて、おまけもしてくれた。最後に行ってらっしゃいと言われ本当に温かい人に囲まれていたのだなと実感し、僕は泣いていた。大量の花火を持った僕を見て二人は歓喜の声を上げた。
「わぁー!!遥ナイスー!」
でもその声も僕が近づくにつれて小さくなっていく僕が泣いているのを見つけた涼は
「どうした?腹でも痛いか?」
と心配顔で近づいてきて背を撫でた。僕は弱々しく
「それは遥希の得意分野だろ?」
と返すと遥希が笑い出し、三人で大笑いした。車に乗り込むと先程までの沈黙はどこへいったのか、買った花火の開封の儀をしながら3人で沢山話した。
 屋敷に着くと沢山の親戚や会社の人が待っていて、その中で爺ちゃんが「待ち侘びたぞ。」と出迎えてくれた。爺ちゃんに涼と遥希の紹介をし、僕らは花火してるから母と話しててと言って庭に出た。新垣がすかさず火やバケツを用意してきてくれ、僕らは花火を選び始めた。すると遥希が珍しく元気のない声を発した。
「ねぇ、これみんな分あるかな?」
僕が数を数えると少し足りなかったのでまたジャン負けで買いに行こうとするとスススッと新垣がどこからか花火を持ってきて
「そうおっしゃると思い、私追加で用意しておきました。」
と笑った。僕らは顔を輝かせて開封の儀をし、会場にいる皆に声をかけに行った。すると爺ちゃんが一番ノリノリで飛び出てきて僕のそばにくるとやり方を聞いてきた。三人で皆にやり方を教えて周り、せーので着火した。その時見た花火は今でも忘れないほどとても綺麗で迫力があった。公園ではできなかった打ち上げ花火も、屋敷の庭は広いのでこっそり打ち上げようということで爺ちゃんが許可してくれた。すかさずスマホを取り出し、様々なアングルから点火し、打ち上がるまでの動画を撮った。大人数でやった花火はあっという間ですぐに終わってしまった。そこからはフリートークタイムということで多くの人たちが僕らと話してくれた。3人で花火の動画や写真を編集してショートビデオを作り、家のスクリーンに映して観たのも思い出の一つとなっている。
 高校生になった今では三人で一緒にうちの会社で必要なスキルを身につけつつ青春を謳歌している。爺ちゃんに内緒でこっそり会社に出入りしてバイトしているのはもちろん秘密だ。