2年後の4月4日の朝。

僕は12年前にすずちゃんと出会ったあの大きな桜の木の下にいた。
すずちゃんがお引越しする前日にした約束を守るためだ。

お昼頃、ロングワンピースを着た1人の帽子をかぶった女性が僕の元にやってきた。

「もしかしてすずちゃん...?」

僕は勇気を振り絞って声をかけた。
すると女性は帽子をとり、こう告げた。

「弓弦さんですよね?初めまして。すずの姉の舞と申します。実はすずから弓弦さんにこちらをと。」

すずちゃんのお姉さんは僕に一通の手紙を渡してきた。僕がそれを受け取るとお姉さんは再び帽子を被り、来た道を帰っていった。
僕はお姉さんを引き止める間もなく、受け取った手紙を開け、その中に入っていた手紙を開いた。





弓弦くんへ

こんな形で会うことになっちゃってごめんなさい。
実は弓弦くんとまた会おうねって約束してから10年後、この手紙を読んでる時から2年前くらいかな?お医者さんから癌を宣告されました。見つかったのが遅かったらしく、余命は長くて1年と言われました。
だから多分この手紙が弓弦くんの元に届いてる頃には私はこの世界にいません。
約束守れなくてごめんね。そしてこんな小さい時にしてた約束を覚えていてくれてありがとう。

ここで一つ、弓弦くんに謝らないといけないことがあります。
あのね、実は2年前、まいと名前を偽って弓弦くんに会いに行ってました...笑
最後に弓弦くんと会いたくて昔の記憶を頼りに歩いてたら橋の下で本を読んでる君を見つけちゃってついつい話しかけちゃった笑
(ちなみに名前はお姉ちゃんの借りてたの笑)
最初はめっちゃ無視されてなんだこいつみたいに思ってたけどだんだん話してくれるようになって嬉しかったよ。
夏休みに遊園地に誘ったでしょ?ちょうどその時くらいにお医者さんにもうこれ以上は外出させられませんって言われてて最後に小さい時からの夢だった弓弦くんと遊園地に行くのだけは何としても叶えたいって思って誘ったの!
あの日、生きていた中で一番楽しかった!
私に楽しい思い出をくれてありがとう。

最後にあの日、弓弦くんがしてくれた告白、めっちゃ嬉しかった!
あの後、会いに行けなくてごめんね。会ったらさらに辛くなるって思って行けなかった。
だからあの時伝えたかったことをここで言うね...。


私、すずは12年前に初めて会った時からずーっと弓弦くんが大好きです。
私に素敵な思い出をくれてありがとう。


すずより






すずちゃんからの手紙の中には遊園地に遊びに行った時の僕と彼女のツーショットが入っていた。


写真を握りながら僕は大きな桜の木の幹に倒れ込んだ。

涙が止まらなかった。


ー僕もだよ。すずちゃん、ずーっと大好きだよ。ー



【完】