次の日もその次の日もそのまた次の日もあの日から彼女は毎日橋の下にやってきた。特に大した用があるわけではなく、本を読んでいる僕に毎回話しかけてくる。
そんな日が2週間続くと流石の僕もどうせ今日も来るんだろうなと思い始めていた。

しかし、その日は橋の下に夕暮れまでいても彼女は来なかった。

(流石に無視しすぎたか?)

と僕は罪悪感を覚えながらその日は帰った。

次の日、僕は相変わらず橋の下で読書しようと河川敷に降りて行った。
しかしそこには人影があり、別の場所に変えようと思った時、

「あ!やっときたぁー!」

聞き慣れた声がして思わず振り向いてしまった。すると彼女がすかさずこっちにおいでと手で合図してきた。
無視しすぎた罪悪感から仕方なく河川敷を降りる。
彼女がいる隣に座りいつも通り読書をし始めようとしたが、昨日なんで来なかったのか少し気になり、聞いてみることにした。

「なぁ、なんで昨日来なかったんだ?」
「えっ、もしかして気にしてくれてたの?!」
「まぁ...。あんなに毎日来てたのに来なかったから...」
「ちょっと体調崩してただけだから大丈夫だよ!!心配してくれてありがとっ!」

彼女は嬉しそうに言った。

(なんでかわかんないけどまぁいいや)


それから僕が橋の下に行く目的は変わっていった。
読書をするためだけでなく、彼女と話すためという項目が追加されたからだ。

彼女の名前は"まい"というらしい。
橋の近くに住んでいるらしく僕と同じ高校生だという。絶対知らないところだと思うしと誤魔化され、高校は教えてくれなかった。
また、彼女のご両親やお姉さんが結構な過保護らしく、よく早く帰ってこいという催促の電話がきていた。まぁそれくらい家族仲が良いと彼女が言っていた。

彼女と過ごしていくたびに僕は彼女の人柄を少しずつ知っていった。彼女は口下手な僕の話を熱心に聞いてくれた。たわいもない話でよく僕を笑かしてくれる。

そんな彼女をいつしか僕は好きになっていた。



その後、本格的に夏休みに入った。
夏休みでも定期的に橋の下に向かい、彼女と話をしていた。

「ねぇねぇ、明日って空いてない??
 一緒に遊園地行こうよ!!」

彼女が急に提案してきて僕は少し驚いた。

「別にいいけどなんで遊園地??」
「いいの!!行きたかったから!!」
「そう...?まぁいいよ。」

「てか弓弦くんって遊園地行ったことあるのー??笑」
「べ、別にどっちでもいいだろ!」

彼女の発言を少し不思議に思ったが、からかわれたことによりそんなことは気にも留めなかった。内心では彼女と遊びに行けることがとても嬉しかった。

「じゃあ明日9時に遊園地の入り口の前でね!」

彼女はそう言い残し、颯爽と河川敷の階段を登って行った。

(やべぇ、明日どんな服装で行こう...??)

僕はそのあと全く読書が手につかなかった。