すずちゃんと会えなくなってから僕は一つ達成したい目標を掲げていた。
それは、体を強くすることだ。
すずちゃんと12年後元気な姿で会うために一生懸命頑張った。
主治医の指導を受けながら毎日少しずつ運動をしていった。


すずちゃんと12年後会う約束をしてから10年後、僕は高校生になった。
血の滲むような努力の末、普通の人とほぼ変わらないくらい体が強くなった。

その時に心の支えとなってくれた主治医の先生に憧れて自分も同じように体の弱い子供たちの力になるために医師を志すようになった。
地元一の進学校に通い、医大に進むため、日々勉学に励んでいた。
しかし、体が強くなったとはいえもともと体が弱いことで人付き合いをしてこなかったことや学校でも勉強ばかりしていることのツケが周り、仲がいいと言える友達は1人もいなかった。

そんな僕はいつも気分転換として学校帰りや休日に家の近くを流れている川のある橋の下で読書をしている。
この時間が唯一リラックスできる時間だ。

ある初夏の日、僕はいつも通り橋の下で本を読んでいた。

「ねぇ、あなた、どうしてここにいるの??
 なんの本、読んでるの??」

知らない女性の声が聞こえたが、僕は自分の唯一の時間を邪魔されるのが嫌で無視した。

「ねぇねぇ!おーい!おーい!」

知らない女性は僕の視界に入るように本と僕の間で手を振ってきて邪魔をしてくる。

「一体なんなんですか!」

僕はついイラッときて反応してしまった。
こういうのは反応しないのが一番効果的なのに。

「あっ!やっとこっち見てくれたぁー!
君に話しかけてるのになんで無視するかなぁー」
「急に知らない人に話しかけられたら無視するじゃないですか!」

なんで無視されてるのかわからないのか首を傾げていた彼女に僕は怪訝な目で睨みながら答える。

「(......よね...) じゃあまたね!」

小さな声で彼女が何か言っていた気がしたが、どうせ文句だろうと聞かなかったフリをした。


(というかじゃあまたねとはどういうことだ??)