「......うわぁぁぁん、うわぁぁぁん......。」

「ねーねー、どうして泣いてるの?」

「僕の体が弱いからって友達が仲間はずれにするんだ...」

「じゃあ私と遊ぼうよ!」

そーっと顔を上げるとそこには僕と同い年くらいの知らない女の子がいた。

「うん!一緒に遊ぶ!!」

公園の大きな桜の木の木陰で泣いていた僕”弓弦(ゆずる)”に話しかけて一緒に遊んでくれた女の子”すずちゃん”が出会ったのは桜が綺麗に咲き始めたばかりの4月4日のことだった。

それから僕とすずちゃんはすぐ仲良くなり、毎日僕の体調が許す限りたくさん遊ぶようになった。
僕はもともと生まれつき体があまり強くない。そんな僕のために激しい運動をしない遊びをいつもすずちゃんが考えてくれた。ある日は木の下でお絵描きをしたり、またある日にはお花畑で花冠を作ったりして遊んだ。

遊んでいくたびに僕は明るくて前向きなすずちゃんのことが好きになっていった。

それから半年たった頃、いつものように公園の木の下で僕はすずちゃんと一緒に遊んでいた。

「あのね、弓弦くんに言わないといけないことがあるの...」

突然、泣きそうな顔になりながらすずちゃんは言った。

「お父さんの転勤で明日、遠くにお引越しするの...。ほんとはもっと早く言わないといけなかったんだけど言えなくて...
 私、弓弦くんと遊ぶのすっごく大好きなの...。だからすずと一個約束してほしいことがあるんだ...」

僕は突然のことに驚いて言葉が出なかったが大きく頷いた。

「12年後の4月4日にまたこの大きな桜の木の下ですずと会おう...?」

「うん!絶対会おう!約束ね!」

僕はそう言いながらすずちゃんに向かって小指を差し出し、それにすずちゃんも答える感じで指切りげんまんをした。