夜は苦手。暗いし、よくいるから、、、。
今だって、用がなければ外に出たくなかった。
コンビニで買い物を済ませ、早く立ち去ろうとした時、左腕が重くなった。邪鬼がいる、、、邪鬼が私を狙っている。
「オマエノカラダイイナァ、チョウダイチョウダイ」
 真っ黒な人の形をしていて、本来目がある場所には目がない。幽霊が人を憎むようになった姿を邪鬼と言う。
首から下げてある濃い赤色の憑き物避けのお守りを握ろうとしたが、家に忘れて来てしまっていた。兄さまは憑き物避けのお守りを作るのが得意で、お守りだけで軽く十個は貰っている。
「え、、、あ、、、どうし、、、」
怖いしか考えられない。このまま体を乗っ取られたら近いうちに死んでしまう。
『真央、ペットボトルの水を操れ!出来るだけ鋭く』
 兄さまの声が頭の中に響き、私はまだ動く右手で買ってきたペットボトルの水を操る。それでも水だから柔らかいし、殺傷能力は少ない。でも、、、
「真央にしては上出来じゃねぇか」兄さまが水を素早く凍らせて邪鬼を刺す。鋭利な氷で刺されると邪鬼は「ギャァァァァ」と耳を塞ぐたくなる悲鳴を上げながら邪鬼は消えた。ペットボトルの水を操らなくても下に向けて流れ出た水を氷にすれば良いのに、兄さまは何故かそれをしない。何故だろう?
「オレから妹を取ろうなんざ百年早ぇんだよ」
兄さまは何時もこうして私を過保護に甘やかし、守ってくれる。そのことに安心感を覚えるのと共に、未だ守られてばかりなことに申し訳なさを感じた。
「私、兄さまに守られてばかりだね」
『良いよ。真央を守るのはオレの役目だからな』
落ちていたエコバックを拾い上げて、帰路を歩いて行く。
邪鬼に掴まれた腕は軽くなっていた。
今度からお守りは、肌身離さず下げておこう。