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 二人はあちこちを見て回り、様々な露店に顔を出した。今回の催しの主役であるアキナは、どこに行っても注目の的だった。
 蓮や多くの群衆の注目の中、アキナは赤い布が敷かれた台に肘を突き、射貫くような眼差しで前方を凝視していた。
 両手には火縄銃のような銃を持っており、視線の先には、髷を結った男のメンコやブリキの自動車など子供の好きそうな品々が階段状に並んでいる。
 数秒後、バン! 銃口から破裂音がして、猫の人形が宙を舞った。「おーっ!」と歓声が上がり、やがてぱちぱちと拍手が始まった。
「ありがとう、かっこいいお姉ちゃん」おかっぱ頭の浴衣姿の女の子が、控えめなお礼を口にした。大人しそうな顔は、ほっこりとした喜びに染まっている。
 店主から人形を受け取ると、アキナは屈んで女の子と目線を合わせてにこりと笑った。
「はい、大事にしてね。なくしたらダメダメだよ」
 ふざけたような言葉とともに、アキナは女の子の髪をゆっくりと撫でた。
「うん!」と元気いっぱいで叫んで、女の子は母親へとたたたっと帰っていった。
 やがてぞろぞろと、二人を囲んでいた群衆が移動を始めた。
「ふう、一仕事終えたって感じだね。射的はやっぱり神経を使うよね。さすがの私も、遊び疲れの色が見えてきたんだよ」
 手の甲で額を拭いつつ、アキナは落ち着いた雰囲気で呟いた。
 蓮は辺りを見回す。終わりも近くなり、一時と比べると人影はまばらになっていた。
「よし、そんじゃあ最後に、俺が円山公園で一番好きな場所に案内するよ。それで今日はお開きで良いか?」
 蓮はアキナに笑いかけつつ、明るく声を掛けた。
 一転、アキナは瞳を輝かせ、人なつっこい笑顔になった。
「それそれ、そういうのを待ってたんだよ! さすがは京都を知り尽くす者! 待ってるだけの男じゃないね! さあて彼は、私をどんな素敵スポットに連れてってくれるのでしょーか!」
 朗らかに喚くと、アキナはぐっと左手を蓮へ出してきた。少し迷った蓮だったが、ゆるくアキナの手を掴んで力強い足取りで歩き始めた。