朗々とした声でお兄ちゃんは話し始めた。
「ソルとルーナは絶対に交わることのない二人だった。片方が秀でれはもう片方は影の存在になる。そんな関係だったんだ。でもお互いがお互いを愛してしまった。それに気づかずに二人は自分の存在をアピールするために戦ってしまった。戦争を起こしたんだ。結果は散々。お互いの気持ちは届くどころか住民だけでなく人間にも被害が出たんだ。その二人は互いに気持ちが通ずることなく監獄送りになった。これでこの話はおしまい。まぁ何が言いたいかって言うと、お前は十分頑張ったんだから自分を責めるなよってこと。俺たちの前にはそんなバカなことをした奴らがいるんだから。人間たちに被害が出なかっただけすごいんだぞ?」
それでも僕が俯いているとお兄ちゃんはネプヌスを地面に下ろして僕のそばにきた。
「ネプヌスには確かに兄貴が六人いる。お前もそのうちの一人だ。もちろん俺もな。でも六人いるからってネプヌスにとってお前は一人だけなんだぞ。見ただろ、お前を見つけた時のネプヌスの顔を?どれだけ自分を責めても仕方ないんだ。過去は変えられない。まぁ上手く言えないけどさ、俺だって弟は六人いるけどお前はお前だし、お前にしか話せないことだってあるんだから、勝手にいなくなったりすんなよ?ウラノス、お前は自分を許していい!俺が許可するから!」
なんだそれ、と心暗く思う自分もいる一方、とても嬉しくて涙がこみ上げてくるような自分もいた。僕はとりあえず頷くとネプヌスを再び抱えて歩き始めた。それからの日々は街などの復旧作業やこれからのコロニーの襲撃に備えた作戦会議などを重ねられた。そんなある日のこと、夜中にベットに行くとネプヌスが寝ながら泣いていた。
「うぅ、お兄ちゃん…。待って!行かないで!」
僕は起こすべきか迷ったがいきなり兄貴が四人もいなくなったんじゃ辛いよな、そう思い起こさずそのままにした。翌朝、物音で早朝に目が覚めた。目を開くとネプヌスがこちらを見て悲しそうな笑顔を浮かべ“待ってて”と言い残して部屋を出ていった。僕は慌てて追いかけると復興が進んでいないエリアに向かっているようで真っ直ぐに走ってエリア内に飛び込んでいった。僕は同じく走って追いかけ、ちょうど崖の辺りでネプヌスが立ち止まったので僕も立ち止まった。心の中でお兄ちゃんに声をかければよかったと後悔しながらネプヌスと相対した。
「お兄ちゃん見てて。」
そう呟きネプヌスが手を掲げると地面が揺れ始めた。そして大きな瓦礫から小さな瓦礫までがある一点からどんどんとどかされていった。そして最後に何かが持ち上げられ近くの地面に下ろされた。よく見るとそれはトゥルヌスお兄ちゃんの遺体だった。僕が駆け寄るとネプヌスも近くに寄ってきて一緒に跪いた。
「お兄ちゃん、痛かったよね、見つけるのが遅くなってごめんね。」
ネプヌスがそう呟き涙を流した。つられて僕も涙がこみげてきて溢れ出した。
「トゥルヌスお兄ちゃん、久しぶり。こんな所にいたの?早く起きてよ!ねぇ、お兄ちゃん!お兄ちゃん…。うわぁぁぁぁぁ!」
兄弟の死が受け入れられていないのは僕の方だった。お兄ちゃんの遺体に縋りついて泣きじゃくった。メルクリウスお兄ちゃんに止められるまで僕のせいで災害が起こっていることにも気づかず咽び泣いた。お兄ちゃんに肩を叩かれて我に帰ると自分を中心に放射状に地面にヒビが入っていた。すぐに地球の様子を見ると地震によって津波が起きていた。呆然とする僕にお兄ちゃんは
「ウラノス、大丈夫だ。大丈夫だからなぁ。ごめんな気づいてやれなくて。そりゃそうだよなお前まだ二九二〇歳にも満たないんだもんな、まだ幼いのに無理させたよな。俺がきちんとウラノスもネプヌスのこともみとかなきゃいけなかったのに、全然みれてなかった。ごめんな。お前はまだ沢山泣いていいんだからな。」
僕たち惑星の子は一日が一年に値する。だから僕は地球で言う八歳だ。僕は首を振ると
「僕のせいで地球の人間まで被害に遭ったんだ。許されることじゃないよ。お兄ちゃん知ってる?人間たちは今ウイルスに日常生活を脅かされてるんだ。そんな中僕なんかの勝手で地震やら津波やら生活が壊れたんだ。本当に取り返しのつかないことをしたんだ、僕は。きっと僕はもう惑星の子でいる資格なんかないよ。」
そう言うとお兄ちゃんは勢いよくビンタした。
「僕なんか?資格がない?ふざけんな!俺は言ったよな、お前のことは俺が許すって。それにもう一度地球の様子を見てみろよ。」
そう言われ地球をもう一度見てみると一番被害の大きかったであろう日本の人間たちはもう復旧作業を始めていた。他の国々も同様にすでに解決のために働き始めていた。息を呑むとお兄ちゃんは言った。
「ほらな?大丈夫なんだよ。俺たちも人間も。あのな、人間たちが俺たちが守らないといけないほどただ弱いなんて考えちゃダメだぞ。人間は弱くない。俺らなんかよりよっぽど協力し合って生きている。弱いなりの知恵というものがあるんだ。お前は確かに自分勝手な理由で住民だけでなく人間までもの生活を脅かした。でも、たまにはいいんじゃないか?俺たちだってまだ子供なんだし、失敗なんて何度でもするだろ。俺たちはな、完璧ではないんだ。」
僕は頷くとその日から完璧であるように振る舞うことをやめることにした。そして地面の修理や復興が進んでいない地域の修復などをネプヌスの新たな力も活用して進めていった。そして修復が完全に終わった日に僕はお兄ちゃんにこう切り出した。
「地球に行ってみたい。」
お兄ちゃんはダメだと言った。しかし諦めきれず
「地球の人々がどのようにウイルスという敵に立ち向かうのかこの目で見たいんだ!」
と強く懇願すると、渋々お兄ちゃんは許可をくれた。ただし、三人で行くというのが条件だった。僕は正直一人で旅に出るのは不安だったのでとても嬉しかった。すぐに荷造りやら住民への通達やらをこなし、一週間かけてついに出発の日がやってきた。
「ソルとルーナは絶対に交わることのない二人だった。片方が秀でれはもう片方は影の存在になる。そんな関係だったんだ。でもお互いがお互いを愛してしまった。それに気づかずに二人は自分の存在をアピールするために戦ってしまった。戦争を起こしたんだ。結果は散々。お互いの気持ちは届くどころか住民だけでなく人間にも被害が出たんだ。その二人は互いに気持ちが通ずることなく監獄送りになった。これでこの話はおしまい。まぁ何が言いたいかって言うと、お前は十分頑張ったんだから自分を責めるなよってこと。俺たちの前にはそんなバカなことをした奴らがいるんだから。人間たちに被害が出なかっただけすごいんだぞ?」
それでも僕が俯いているとお兄ちゃんはネプヌスを地面に下ろして僕のそばにきた。
「ネプヌスには確かに兄貴が六人いる。お前もそのうちの一人だ。もちろん俺もな。でも六人いるからってネプヌスにとってお前は一人だけなんだぞ。見ただろ、お前を見つけた時のネプヌスの顔を?どれだけ自分を責めても仕方ないんだ。過去は変えられない。まぁ上手く言えないけどさ、俺だって弟は六人いるけどお前はお前だし、お前にしか話せないことだってあるんだから、勝手にいなくなったりすんなよ?ウラノス、お前は自分を許していい!俺が許可するから!」
なんだそれ、と心暗く思う自分もいる一方、とても嬉しくて涙がこみ上げてくるような自分もいた。僕はとりあえず頷くとネプヌスを再び抱えて歩き始めた。それからの日々は街などの復旧作業やこれからのコロニーの襲撃に備えた作戦会議などを重ねられた。そんなある日のこと、夜中にベットに行くとネプヌスが寝ながら泣いていた。
「うぅ、お兄ちゃん…。待って!行かないで!」
僕は起こすべきか迷ったがいきなり兄貴が四人もいなくなったんじゃ辛いよな、そう思い起こさずそのままにした。翌朝、物音で早朝に目が覚めた。目を開くとネプヌスがこちらを見て悲しそうな笑顔を浮かべ“待ってて”と言い残して部屋を出ていった。僕は慌てて追いかけると復興が進んでいないエリアに向かっているようで真っ直ぐに走ってエリア内に飛び込んでいった。僕は同じく走って追いかけ、ちょうど崖の辺りでネプヌスが立ち止まったので僕も立ち止まった。心の中でお兄ちゃんに声をかければよかったと後悔しながらネプヌスと相対した。
「お兄ちゃん見てて。」
そう呟きネプヌスが手を掲げると地面が揺れ始めた。そして大きな瓦礫から小さな瓦礫までがある一点からどんどんとどかされていった。そして最後に何かが持ち上げられ近くの地面に下ろされた。よく見るとそれはトゥルヌスお兄ちゃんの遺体だった。僕が駆け寄るとネプヌスも近くに寄ってきて一緒に跪いた。
「お兄ちゃん、痛かったよね、見つけるのが遅くなってごめんね。」
ネプヌスがそう呟き涙を流した。つられて僕も涙がこみげてきて溢れ出した。
「トゥルヌスお兄ちゃん、久しぶり。こんな所にいたの?早く起きてよ!ねぇ、お兄ちゃん!お兄ちゃん…。うわぁぁぁぁぁ!」
兄弟の死が受け入れられていないのは僕の方だった。お兄ちゃんの遺体に縋りついて泣きじゃくった。メルクリウスお兄ちゃんに止められるまで僕のせいで災害が起こっていることにも気づかず咽び泣いた。お兄ちゃんに肩を叩かれて我に帰ると自分を中心に放射状に地面にヒビが入っていた。すぐに地球の様子を見ると地震によって津波が起きていた。呆然とする僕にお兄ちゃんは
「ウラノス、大丈夫だ。大丈夫だからなぁ。ごめんな気づいてやれなくて。そりゃそうだよなお前まだ二九二〇歳にも満たないんだもんな、まだ幼いのに無理させたよな。俺がきちんとウラノスもネプヌスのこともみとかなきゃいけなかったのに、全然みれてなかった。ごめんな。お前はまだ沢山泣いていいんだからな。」
僕たち惑星の子は一日が一年に値する。だから僕は地球で言う八歳だ。僕は首を振ると
「僕のせいで地球の人間まで被害に遭ったんだ。許されることじゃないよ。お兄ちゃん知ってる?人間たちは今ウイルスに日常生活を脅かされてるんだ。そんな中僕なんかの勝手で地震やら津波やら生活が壊れたんだ。本当に取り返しのつかないことをしたんだ、僕は。きっと僕はもう惑星の子でいる資格なんかないよ。」
そう言うとお兄ちゃんは勢いよくビンタした。
「僕なんか?資格がない?ふざけんな!俺は言ったよな、お前のことは俺が許すって。それにもう一度地球の様子を見てみろよ。」
そう言われ地球をもう一度見てみると一番被害の大きかったであろう日本の人間たちはもう復旧作業を始めていた。他の国々も同様にすでに解決のために働き始めていた。息を呑むとお兄ちゃんは言った。
「ほらな?大丈夫なんだよ。俺たちも人間も。あのな、人間たちが俺たちが守らないといけないほどただ弱いなんて考えちゃダメだぞ。人間は弱くない。俺らなんかよりよっぽど協力し合って生きている。弱いなりの知恵というものがあるんだ。お前は確かに自分勝手な理由で住民だけでなく人間までもの生活を脅かした。でも、たまにはいいんじゃないか?俺たちだってまだ子供なんだし、失敗なんて何度でもするだろ。俺たちはな、完璧ではないんだ。」
僕は頷くとその日から完璧であるように振る舞うことをやめることにした。そして地面の修理や復興が進んでいない地域の修復などをネプヌスの新たな力も活用して進めていった。そして修復が完全に終わった日に僕はお兄ちゃんにこう切り出した。
「地球に行ってみたい。」
お兄ちゃんはダメだと言った。しかし諦めきれず
「地球の人々がどのようにウイルスという敵に立ち向かうのかこの目で見たいんだ!」
と強く懇願すると、渋々お兄ちゃんは許可をくれた。ただし、三人で行くというのが条件だった。僕は正直一人で旅に出るのは不安だったのでとても嬉しかった。すぐに荷造りやら住民への通達やらをこなし、一週間かけてついに出発の日がやってきた。