僕らは惑星の子。太陽系と呼ばれているスペース空間のもっと遠く。銀河の先まで僕らの居住区だ。我が家の担当は地球含む太陽系だ。僕は何がとは言えないが気に入ったので地球と火星の人々を守っている。僕ら惑星の子の仕事は自分の担当の惑星などを他の惑星や僕たちの敵から守ることだ。因みに地球は地震が多いのでその頻度を減らしたり災害の程度を和らげたりするのも僕の役目だ。僕には兄弟が六人いる。両親は会ったことがないので分からないが我が家の長男が皆の親代わりだ。僕は六男で弟が一人いる。弟の名はネプヌスと言って甘えん坊で泣き虫な子だが一番と言っても過言ではない仕事をしている。僕はそんな弟が誇らしいと共にお兄ちゃんたちに一目置かれているネプヌスの存在が時には疎ましくも思うのであった。今日はスペース空間で模擬戦がある日だ。僕らの敵、コロニーの襲撃に備えて月に一度行われる。この日は銀河の奥まで行けるとネプヌスがはしゃぐので兄貴面ができるいいチャンスなのだ。この日のために貯めたお小遣いをポケットに深く入れ僕は走り出した。船に乗り込んで発進させようとした時アラートが鳴り響いた。『緊急速報緊急速報!コロニーが太陽系目がけ突入しているとの情報あり!もしもの場合は迎撃を許可する!繰り返す…。』ネプヌスは不安そうに僕の服の裾を掴んだ。僕はその手ごと自分の手で包み込むと言って聞かせた。
「大丈夫!いつもの訓練通りにやるんだ。できるな?」
それは自分自身にも言い聞かせているようにも感じた。僕は深呼吸するとお兄ちゃんたちの目を見て頷いた。お兄ちゃんたちも頷き返してくれ、そしてメルクリウスが言った。
「ウェヌス、テルス、ユピテル、トゥルヌス、ウラノス、ネプヌス。ウラノスが言ったように落ち着いて、いつもの訓練通りにやるんだ。いいな?僕らの他にも守るべき住民はいるし、人間たちには絶対に被害を出してはいけない。だから皆で協力するんだ。いいか、俺たちも死んじゃダメだぞ!」
我が家は日本で言うショウグン家みたいなもので住人の皆と惑星の中に住む人間たちも守らないといけないのだ。これで家族皆揃うのは最後かもしれない。そのつもりで生きろと教わってきた。僕はネプヌスの手を離すと軽く自分の頬を叩いて立ち上がった。そして史上最悪のコロニーとの戦いが幕を開けたのだった。
 結果は本当に散々だった。
「お兄ちゃん、ネプヌスどこー!いたら返事してー!」
周りを見渡すと瓦礫だらけで訓練の通りなんて言えないくらい悲惨な状況だった。僕は戦いが終わってから兄弟がいたであろう所をずっと探し回った。そしてシェルターの中で住人を誘導したり子供を励ましたりと毅然と振る舞っているネプヌスを見つけた。
「ネプヌス…。ネプヌス!」
弟の名を必死に叫ぶと弟の体が震えこちらをゆっくりと振り返った。僕は息を呑んだ。
「お前、その顔…!あぁ、クソ!」
弟の顔は火傷で爛れ、元の可愛い顔なんてかけらも見られなかった。ネプヌスはよろよろと歩み寄ってきて僕に抱きついた。
「よかった生きてた…!お兄ちゃん、ごめんね。」
僕は首を大きく横に振って答えた。
「お前が謝ることなんてないんだよ。僕がお前を守るべきだったのに!ごめん、ごめんなぁ。こんな火傷までさせて、最低の兄貴だな…。」
そう呟くとドンと突き放されてネプヌスは僕を睨みつけて言った。
「僕の兄ちゃんを侮辱するな!僕の兄ちゃんはすごいんだぞ、人間には一切被害を出さなかった!傷だらけになっても絶対に逃げなかった!兄ちゃんから溢れる血は、涙は!皆を守った勲章だろ?」
僕たちは二人で声をあげて泣いた。住人の皆はそれを温かく見守っていてくれて椅子や温かい飲み物を持ってきてくれた。落ち着いた頃、僕たちはお兄ちゃんたちを探しにシェルターを出た。
 五人のお兄ちゃんのうち生きて会えたのはメルクリウスお兄ちゃんだけだった。ウェヌス、テルス、ユピテルお兄ちゃんは遺体を見つけられたが、トゥルヌスお兄ちゃんは発見できず仕舞いだった。遺体を見つける毎にネプヌスは頬を濡らした。メルクリウスお兄ちゃんは僕たちと出会った時飛び上がって喜んだ。僕らは抱き合って喜びを噛み締めた。
「ウラノス、ネプヌス、よく生きてた!ウラノス、人間界に被害を出さず、よく頑張ったな。ネプヌス、住人の誘導もしてくれたんだってな。ありがとうな。二人とも俺の自慢だ!」
喜んではしゃいでいるとネプヌスは安心したのかそこで気を失って膝から崩れ落ちてしまった。メルクリウスお兄ちゃんと二人でネプヌスを運ぶ中で、昔話を聞いた。それはきっと両親の話だったのだろうと今になって思う。