「届けてくる。お前は此処にいると良い」果汁で書いた手紙を男性に渡しに行くカタクリ。
隠れてついて行っても良いよね!!
カタクリが拝殿に行った後、走ったらバレてしまいそうなので渡り廊下を歩く。拝殿に続く戸を開けようとしたが開かない。
「、、、あれ?」
 鍵が閉まっている。
カタクリは鍵を開けずに行ってしまったみたい、、、。摂社から拝殿に行くには此処を通らないと拝殿には行けない。拝殿に行けなかったら境内にも出られない。
(此処の鍵は、、、文机に入れていたはずだから取りに行こう)
 摂社に戻り、文机の引き出しを探すが、紙と筆記具しか入っていなかった。
 部屋の中を探すが、それらしい物は見付からない。探し続けていると一冊の本を見付けた。薄汚れた深緑色の、初めて見る本だった。本には赤色の手鞠(かんざし)が挟まれている。そのページを開けると何か書かれていた。
日付と内容、日記帳かな?
『四月十二日
マヨイが産気づいたと言っていた。相手はどうやら麓の村に住んでいる男らしい。男とは直接話したことはないが、マヨイが生き神になる前にいた夫だと言う。身籠っているというのは知っていたが産気づいたという報告を受けて当然驚いたし、腹にいる子供が気がかりだ。マヨイ曰く神職には言っておらず、産まれたら男と共に育てるんだとか。そういや一人の男が産婆を呼んで来ると言い、村に下りて行ったな。この二人の問題は色々残っているが、そこは本人達に任せておこう。』
 誰かが書いた日記帳。マヨイという名前は生き神の少女だろう。内容を見るに少女というより大人の女性、、、。
日記帳に挟まれていた簪に視線を落とす。カタクリの物でもなさそうだし、私の物でもない。
「綺麗、、、。誰のだろう?」
少し古びているから昔、この社を訪れた人が置いて行ったのかもしれない。
 ちゃんと手入れがされているから、この簪はきっと持ち主にとって大切な物だったのだろう。
直接確認したことはないけれど、、、カタクリは極力、奉納品以外は外の物を社に持ち込まないようにしていた。
  記載者の名前を探したが書かれていない、だが、見慣れた文字の書き方でカタクリだと思う。
拝殿から戻ってきたら聞いてみよう。