少し涼しい秋の季節がやってきた。

今日は、涼平とピクニックをすることになっている。

家を出て、公園前に行くと、彼が立っているのが
見えた。

「涼平!やっほー!」「おう!風鈴!」

私たちは、公園の芝生にレジャーシートを引いた。

「見てージャーン風鈴特製おべんとう!」

「うわっうまそう。ありがとな。」

「全然!余裕だよ。」

それは建前で、本当は3時間ぐらいかけて作ったのだ。
でもこれは、私の心の中に沈めておこう。

「うわっうま、からあげ」

「えっほんと!嬉しい!」

作ったかいがある。好きな人に褒めてもらうのがこの世で何よりも嬉しい。

お弁当を食べ終わり、2人で空を眺めて寝転がった。

雲のスピードが早く、どんどん景色が変わっていく。

何も喋らずに、ただ空だけを。そんな時間でも、
彼がいるだけで幸せだ。

横を見ると、涼平が何故か悲しげな顔をしている。
この顔の奥には、何があるんだろう。
私は拳を握りしめて聞いてみることにした。

「何かあった?」

彼は、こちらを向き、慌てて「えっなんでもないよ」
と返す。

なんでもないわけない。そうきっと。

「ねーバトミントンしようぜ」「うん、!」

彼は、誤魔化すように作り笑いをうかべる。

「せーの」 羽が空をまう。私のところに帰ってきてまた彼の元に帰る。こんな風に私の気持ちも簡単に届けられたらな。

バトミントンを終え、彼と帰ることにした。
夕方の涼しい風。道路には影がふたつ並ぶ。

彼がなにか言いたそうな顔をしてこちらを見る。

私は不思議に思い、彼に再びあの言葉を放つ。

「どうかした?」

少し沈黙が走る。虫の音と風の音。
秋の音色が取り巻く。

「やっぱり、風鈴には聞いて欲しい。」

そう彼は言った。