「遅くなったー。」
走りながら彼女に話かける。
「まだ5分前だよ!私が早く着いただけ笑笑」
今日は、最後の夏休み。俺はどこに行くかわからない。とりあえず山江駅に集合した。
「じゃあまずは電車に乗ります。」
「わかった!」
今日は思いきって彼女の言うことに従ってみることにした。だいぶ電車に揺られて目的地に着いたらしい。
「降りるよー!」
駅からでて少し歩くと、海が見えてきた。
「海だ。」「何その薄い反応!?綺麗でしょう。ここ私が本当は最初に涼太を連れてきたかったところ。」
あっ、確かに最初、本当はイメチェン企画じゃなかっ
たはず。なぜか申し訳なくなり、「その時はごめん笑」と謝った。「あははは笑笑」
彼女は明るく元気に笑う。
「で、まずは何をするのか?」
「まずはもちろん腹ごしらえ!行くよー!」
はぁー。今日も振り回されそうだ。
「うわーどれにする?」
彼女がリサーチしてくれていた海鮮丼のお店に来た。「俺はもちろんいくら丼。」
「うわーそれも捨て難い。でもーサーモンも。」
「半分すればいいだろ。」
「えっ神!!成長したね!」「なんだよ笑笑」
結局いくら丼とサーモン丼を頼んだ。お店の人が運んできてくれたのを見るときらきらと魚が輝いている。
「えっすご」「やばーい!!!美味しそう!!」
お店の人は彼女の反応を見て笑っている。
「おい落ち着けって」「あーごめんなさい。笑」
見た目も綺麗だが味も負けていなかった。
シェフになりたいと思っている今は、こういうのも勉強になる。彩り、魚の切り方すみずみ見て学ぶ。
その後2人でシェアしてゆっくり食べ、店を出た。
「次はどこ行くのか?」「海だよー!」
潮風が吹く海。夏を強く感じる。
はぁー。自分の悩みもすごく小さく感じる。
「ねー、私幸せだわ。」「俺も今世が1番かもな。」
そう感じさせてくれたのはきっと彼女のおかげだ。
ぼっとー海を眺めたていると、バシャ
一体何が起こったか分からなかったがどうも彼女が水をかけてきたらしい。「やったなー」と水をかける。
それからはびしょびしょになりながら水を掛け合い遊んでいた。そんなことをしている内にすっかり暗くなってきている。その時だった。
ヒューーバンバン
「えっっ!?」「えっ風鈴、知ってたか?」
「知らないよーえーすごい綺麗。」
花火を2人でじっと見つめる。まさか花火大会があるのを知らずに行き被るとは相当な運だ。
「ねー、」「なんだ?」
「私って花火みたいな人生じゃない?」
「あーそうだな。」「花火に改名しようかな?笑」
「似合わないからやめとけ笑」
「おいなんって言った!!」
「でも、来世の名前決めとこうぜ見つけやすいように笑」
「やっぱり私は花火だね!!笑 涼太は?」
どうやら彼女はこの名前を譲らないようだ。
「うーんやっぱり涼平とか?呼びやすくね普通に」
「普通にやめなさい笑1文字変わっただけじゃんおもんな笑」
キラキラ目を輝かせて、笑う彼女に知らずとカメラを向ける。この笑顔を残したい。
アルバムの最後に貼るために俺はシャッターをきる。
「涼太おはよう!」「おはよう!」
今日は始業式で学校が始まる日だ。イメチェンしてから友達もでき、二学期は楽しめそうなそんな予感がした。
「涼太ってさ、最初話しにくかったんだけど、なんか変わったよね」「そうそう特に最近」
そうか?と自分で思いながらも彼女と過ごしてから少し自分が明るくなった気がする。
「ねー涼太、恋してんじゃない?笑」
1人の女子がそう言う。「いやー違うよ笑」
絶対にありえないと否定する。みんなと笑い合う。
そんな日常がとても楽しい。さっき言ってた恋。
この感情はまさか、、?恋?
恋の事を考えると、頭がボッーとして授業も頭に入ってこなかった。ずっと風鈴のことを考えてしまう。
何でなんだろう。風鈴といると楽しくて、落ち着いていられて、居心地がいい。でもそんなことは考えたことなかった。いざ考えると難しく、よく分からない。
そこで、俺はネットで調べてみることにした。
「人のことをずっと考えてしまうと。」
検索結果は、恋ですと。
「はぁー。やっぱりか。どうしよう。」
俺の日常がより忙しくなる。そんな気がした。
その日はその事ばかり考えてしまいあまり
眠れなかった。
そこで俺はあることを決意した。
深夜の12時。俺は、風鈴との約束を破ってしまう。
机の引き出しから、封筒を取り出す。
丸文字で涼太へと書いてある手紙。風鈴がくれた、多分彼女からの遺書になる予定だったものだ。
俺は、それを今読むことにした。
彼女の死に向き合うために。
「涼太へ
まずはこの手紙を読んでくれてありがとう。実は、この手紙、図書館で書いたのとは違うの。おばさんに協力してもらって入れ替えたんだ。幼なじみふうちゃんとしての気持ちも書くためにね。まぁ、遺書として渡したけど、涼太のことだから私が死ぬ前に読んじゃうだろうな。幼なじみなめないでください。だいたい分かります笑 涼太。思い出を一緒に作ってくれてありがとう。沢山振り回してごめんね。少しは、反省してます笑 そして、私の夢を応援してくれてありがとう。初めて応援してもらえたから。私にはなんにもないし。どうせ無理な夢だからって。みんなまずは病気を治そうって。それもありがたいし、真っ当な事だとは分かってる。でも、。でも私が欲しかったのは涼太みたいな言葉でした。叶わない夢でも。応援してくれて私に希望をくれてありがとう。涼太の夢は今世で叶えてください。シェフ絶対なってね。天国まで美味しい料理届けてね。味見のプロだから、涼太を1人前に鍛え上げるね笑
そして、りょうくんへ
気づくの遅かったね。そこだけは、未だに許してません。でも、会えて嬉しかった。会えただけで、嬉しかった。そう思ってたはずなのに。君と過ごすだびにもっと生きて一緒に過ごしたい。そう思ってしまう私がいます。もっと出来ることなら、一緒に過ごしたかった。出来れば恋人同士で。手を繋いで。ハグをして。お互いを見つめあって。もっと一緒に過ごしたかったな、、。生きたいなぁ、、。もっと長く。欲は言わないから30歳まで。来世は、私を好きになってくれますか?私を見つけてくれますか?君が他の子見てるなんて嫌だよ。私だけ見ててよ。本当に大好きでした。きっと世界で1番大好きです。これからもずっと。今までありがとう。
風鈴、ふうちゃんより」
俺は、泣き崩れた。たぶん今までで1番泣いた。
現実を見たくない。生きて欲しい。
そう願うだけだった。
俺は、白紙で図書館から持って帰ってきたレターセットを取りだしペンを握った。
その日は、漆黒のように空がくすんでいる。
そんな気がした。
その夏の後、1人で流しそうめんをした。
スイカ割りも。川遊びも。花火も。海にも行った。
でも何か足りなかった。
ピンポーン 「はいこんにちは、どうぞ」
「すみません挨拶してもいいですか?」
「どうぞ。喜ぶわ。」和室に通してもらう。
仏壇の前で手を合わせる。「遅れてごめんね。涼太。」
学校から帰ってる途中彼は、。彼は、車にはねられた。
症状は脳死。
彼は、。涼太は、。意識が無くなってしまったのだ。
生きているけど意識は無い。私は、その事に向き合えず、引きこもりになっていた。
そんな時、涼太のお母さん、おばさんから、電話を受けた。見て欲しいものがあるのと。
涼太は、最後にメッセージを残していた。
心臓移植をすること。
涼太のお母さんがその伝言を見て、
彼は心臓を他の人に授けた。そして私にも伝言を。
「風鈴へ
手紙先に読んでごめんな。それ読んで思った事なんか今書き出してる状態。変だよな笑でも、風鈴だけあんなに背負うのはな。いくら何でも可哀想だから。俺も書くよ。俺の願いはただ1つ。風鈴に今世も生きて欲しい。あきらめずに。もちろん大変なことっていうのは分かってる。だから直で言える自信ないから一応手紙に書いてるし。でも、自分の目標を強く持って叶えて欲しい。風鈴なら、センスあるしスタイリスト絶対なれるだろう。絶対叶えろ。まぁもう1つ願いがあるとすれば、ちゃんと告白して風鈴と付き合いたい。俺、勇気でなかったわ。もし、言ってこの関係が壊れたらと思うと、風鈴とは関われない。そう思って閉じ込めた。だから、いつか絶対に伝える。俺に初めて生きる希望をくれたから。君ならどこだって駆け抜けられるよ。自分を信じて突き進め。どんな大きい壁でも乗り越えられる君なら。生きてくれ。お願いだから、、ただそれだけ。 涼太より」
最後の字が滲んでいる。涙のあとがある。
私はその手紙を読んで泣き崩れた。自分が、。自分が先に死ねばこんなのは味あわなくてすんだ。
涼太は生きれる命なのに。なんで、。なんで、。
私は神様を何度も恨んだ。
絶望して引きこもって。でも、私は決めた。
彼の最後の願い。生きることを。
それは相当大変な事だった。たくさんの病院を受診して何度もオペを受け、心臓移植をやっとして今生きている。
涼太みたいな誰かが繋げてくれた命を私は受け取った。
だからね、。涼太。私生きるね。
私はその後、服飾学校を卒業し、スタイリストをしている。涼太が亡き人になって、もちろん気持ちは前を向けなかったが、今は仕事にやりがいを持ち楽しんでいる。
今日は、久々に地元に帰る。
「うわーこの感じ懐かしい、。」
涼太と過ごしたあの夏を思い出す。
「あれ、。おかしいな、なんで私泣いてるんだろう。」
涙が止まらない。泣きたくて泣いてるわけ
じゃないのに。
「大丈夫ですか?」
急な声掛けに、後ろを振り向くと、
見知らぬ男の子が立っていた。
「どうしたんですか?僕でよければ話聞きますよ。」
普通は、そこで大丈夫ですと断るだろう。
けど、私は何故か断れなかった。
「僕の名前は、八木田 優太です。」
「あなたの名前は?」
一瞬、優太が涼太に聞こえてしまう。
私が沢山呼んだあの名前。
「私の名前は、清水 風鈴です。」
「風鈴さん。どうされたんですか?」
「あの、私好きだった人を亡くしてるんです。」
「はぁ、。」
「本当に大好きで、今までで。でも、次の恋に行こうと思って付き合ったんですよ。今の彼氏と。だけど、やっぱり地元に戻ってきたら、思い出しちゃって。その人と過した夏の思い出とか。」
「うーん、じゃあ他人の僕と消しちゃいませんか?
その思い出。」
普通はこんな変な提案引き受けないだろう。
でも考える間もなく返事をしていた。
「お願いします。」
その日は山江駅に集合した。
少し前に着こうと思い早く家を出た。
私の予定に付き合ってもらため、当然のことだ。
10分前に着いたがなんとそこには、昨日会った涼平くんがいた。
「すみません遅れて、、。」
「大丈夫ですよ。行きましょうか。」
涼太とは、全く違う。遅刻はしないけど、私よりいつも遅く来るし。かと思えば服はダサかったし。髪型も寝癖だらけだし。あの時の思い出が、フラッシュバックする。
「風鈴さん?行きましょう!」「すみません。今行きます!」
今日は、私の祖父の別荘に行くことになっている。さすがに泊まりはしないが、そうめん流しをしたりしようと思っている。
「いきますよー!それー!」
そうめんがスルスル落ちていく。
「せーの」優太さんの手元を見ると、箸にあるのはたったの2本。「あはははは笑」「もー笑わないでくださいよ笑 風鈴さんお手本お願いします。」「いや私はそのまま食べる派なんで。」「なんですかそれ笑笑」
そこから、だいぶ仲良くなり、まさかの同い年ということを知り、タメ口で話せるようになった。
さっきまでの気まずさはなんだったのか不思議になるぐらい話せた。
「じゃあ花火しようぜ!」「しよう!」
パチパチパチ
花火が火花をあげる。「綺麗だなぁ、」
あの頃の私は、死を覚悟していた。ほぼ受け入れてた。でも、涼太と出会って生きたいと思った。
そして今、生きている。本当に人生、何が起きるか予測不可能だ。
「風鈴って花火みたいな人だな。」
えっ、、。頭の中をフラッシュバックする。
彼は、不思議そうな顔でこちらを見る。
「えっ、?そうかな笑」とすかさず返事を返す。
その後は、後片付けをして電車で山江駅に向かった。
「今日はありがとう。付き添いなのにこんな楽しませてもらって。」
「いや、こちらこそ。私のわがままであんな田舎で。」
「いやいや。じゃあまた連絡して。」
私は静かに手を振る。彼の後ろ姿を見て。すると彼はこちらを向き、大声で叫んだ。
「また、思い出上書きしようなー」
1人になり心が、寂しくなる。
今日の夜は、一段と星が光り輝いていた。
今日は、少し遅めに家を出た。もう日が暮れ始めている。「よっ!風鈴」「やっほー!!」
あの日から、何回も会う内に、彼から好意を向けられるようになった。
だけど、私は、まだ自分の気持ちを整理できていなかった。そんな私に、優太は、「ゆっくりでいいよ。」と言ってくれた。
本当に優しい彼に、答えたい気持ちもあるが、まだ考えたい気持ちが大きい。それを伝えたら、夏休みで試してみてと言われた。
今日は、そう。花火をしに行く。
「うわー綺麗だな。」「ねー。花火大好き。」
花火に浸りながらゆっくり時間が過ぎていく。
この時間も大好きだ。
ぱちぱちぱち
この音懐かしいな。
ぽろっ。1粒の雫が足に落ちてきた。
「あれっおかしいな笑 なんでだろ」
「たくさん泣きな。」
あの日の思い出が蘇る。
大好きだったあの人。会えないあの人。
どこで会えるんだろうと。
その日は、湿気混じりの空気が吹いていた。
今日は、原宿に来ている。
「うわー人多いね笑」
今日は、日曜なこともあり、原宿は人で
溢れかえっている。
「だなー。はぐれんなよ。」
門をくぐって、入っていく。「うわっ」人に挟まれ、足がぐらつく。優太は、こちらに気づいているが、こっちに来れるスペースもない。
「大丈夫ですか?」
そこには見知らぬ、同い年ぐらいの男性が立っていた。「すみません、ありがとうございます。」
「もう早くー。涼平!」
隣にいるのはどうやら彼女らしい。
彼女いるのに助けてくれるなんていい人だな
そう感じた。
「じゃあすみません、気をつけてください。」
彼にお礼をしたが、そそくさと行ってしまった。
でもどこかで聞いたことある名前、。涼平、。まさか?同じ名前の人ぐらい、。
「あれっこれなんだろう?」
私が倒れたところに、ハンカチと名刺が落ちていた。
「涼風 涼平、。」
「大丈夫か?風鈴。ごめんそっちに行けなくて」
「・・・」
「風鈴、?」
「あっごめん。全然平気だよ!ありがとう!」
それから、プリクラを撮り、いちご飴を食べた。
「美味しいなにこのいちご飴ってやつ!」
「でしょー!!大好きなんだー!」
彼と過ごす時間は、楽しい。
でも、何か心の中で欠けている。
「今日もありがとうな!」「こちらこそ。」
「じゃあまた!」
夕暮れの中、気持ちが揺れている。そんな気がした。
夜中の12時半。私はある決心をした。
今日、助けてくれた人に、感謝のメールをすることを。
彼女がいる人にメールをしていいのか迷う気持ちが大きかったが、何か気になるところがあり、体が先に動いていた。
「今日、助けていただいた者です。ハンカチと名刺を落とされていて拾わせていただきました。お返しとお礼させて頂きたいので、会えないでしょうか?」っと。
メール完了。なんで私こんなに緊張してるんだろ、。
ピコン。通知音がなり、すぐさま確認した。
「すみません。ありがとうございます。明日の昼の
12時半はどうでしょうか?」
明日の12時半。なにか特別なことが起きるそんな気がした。
彼との待ち合わせ場。カフェにやってきた。
とても雰囲気が良く、オシャレなお店だ。時刻は12時28分。あと少しで来るかな、?
「すみません遅くなって、」「いえいえ、。」
ドリンクを注文し、話し出す。
「これ、落とされたハンカチと名刺です。」
「ありがとうございます。わざわざ。」
「こちらこそ、この間は助けて頂き、
ありがとうございます。」
「いやいや、大丈夫でしたか?」「全然大丈夫です。」
「あのお名前聞いてませんよね。すみません。」
あっそうだ。私はいつも話す順番がズレている。
「清水 風鈴です。ふうりんって書いてふうりと読みます。」
「俺は、涼風 涼平。多分同い年じゃない?タメ口にしよ!」
そこから話すと、お互い同い年なことが明らかになった。何故か、話すうちに。涼太に似ている。
そんな気がした。思い出がフラッシュバックする。
「うわっもうこんな時間だ。りりとの待ち合わせがあるんですみません。今日は、ありがとう。じゃあまた!」
「いえいえ、また!」
彼女持ち。涼太に似ていたとしても。
好きには絶対になってはいけない。
その日は、アイスコーヒーのような爽やかさがある
夕日だった。