「あー早く死にたい。」

屋上のフェンスをこえた先に今日も立ってみる。

飛び降りたら楽なんだろうっと思っていても、
足がガクガク震えて前に進めない。

みっともなさすぎる自分に飽き飽きした。

「なにしてるのよ!」

振り向くとそこには見知らぬ顔の女子高生がいた。

突然なことに、ぼーっとしていたら袖を引っ張られ、
安全な位置に戻されている。

「危ないよあそこは!死んでもいいの?」「いいよ。」

即答でそう返した。彼女は黙って俺を眺めた。

とても驚いた顔をしている。

まぁそれは無理もないだろう。

初めて会った人に死にたいと言われたならば。
彼女は数分立って口を開いた。

「じゃあ死ぬまでに思い出作りませんか?」「えっ、」

俺はあまりにも衝撃的な言葉に、驚きを隠せない。

死にたいと言われたならば、普通は止められるだろう。

けど止めずに思い出を作ろう、、?初対面の人に。

「本気で言ってます?」「本気だよ。一緒に思い出作ろうよ。だって人生の最後、素敵な走馬灯見たくない?」

正直、見てみたい気持ちはある。
今のままだと最悪の走馬灯を見てしまいそうだから。

俺、水瀬 涼太は今クラスのやつから
いじめられている。

悪口を言われたり物を隠されたり奪われたり。

理由は、高校2年の春に父親がなくなり、シングルマザーになって浮いてしまったことから始まったらしい。

高校生にもなってそんないじめをするかと最初は気持ちも沈まなかったがいじめのエスカレート、生活からのストレスが溜まり精神的に追い込まれている。

おまけに、先生は相手をしてくれない。

母親には心配をかけたくないため相談できない。

そんな状態だ。少し心の中で考えてみる。

「思い出作りたい。」

気付かぬ間に、口から溢れでていた。

最後だけでも、良い記憶で塗り替えられたら。

そう強く感じた。

「やったね!!よろしく!放課後にまたここで!!」

すばしっこい足で、校舎に入っていく。

「あっあの名前は?」

もうそこには、彼女の姿はなかった。

「不思議な子だな。」

この時までは、彼女の本当の姿を知らなかった。