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 宮大工の姿を追った。その一挙手一投足に目を光らせた。妻はその丁寧な仕事ぶりをカメラに収め、フラッシュと連射音が鳴り響いた。
 宮大工の技の素晴らしさと彼らが作り上げた作品をより多くの人に伝えなければならない。それも、わかりやすく、感動的に。鋭い眼光、盛り上がる筋肉、磨き抜かれた技、張り詰める空気、それらを文章にすると同時に、写真、動画に収めていった。そして、宮大工の神髄(しんずい)へと迫っていった。
 鉢巻(はちまき)足袋(たび)姿の妹にマイクを向けると、カメラをじっと見据えて語り始めた。
「私を含めて宮大工は全員、木の声を聴きながら、木の心を感じながら、木と話をしながら、木の気持ちに沿って木組みをしています」「棟梁や経験を積んだ宮大工は千年前の古の大工と話をしながら一つ一つ丁寧に修復をしています」「宮大工は技術だけでなく古から受け継いできた日本の精神の承継者でもあります。千年の魂を引き継いでいるのです」