私と君の 僕と君の 嘘

 桜が咲く頃、真新しい鞄を持ち、おぼつかない足取りで、手を繋いで歩く二人が大学の門をくぐっていた。
「まさか、志望していたT大に入れるなんて、本当に夢みたい。」
「ちなみに僕もいるよ。」
「うん、あそこから巻き返すなんて。頑張ったんだね。本当にすごいよ。」
「うん、めっちゃ頑張った。」
彼らは楽しそうに話しながら歩いて行く。
「ねえ、自己紹介とかあるのかな。」
「えっ。私、何も考えてきてないよ。」
「僕は、好きな食べ物はペンギンですって言おうと思ってる。」
「いや、私しか分からないから、それ。」
彼らの笑い声が桜の花びらを小さく揺らした。