今日、僕は早く帰ってきた。それは昨晩のことがあったからで、僕は美幸を一人の女性として見ていたことが明確に自覚できたからだった。
美幸はLINEで8時過ぎに帰宅すると知らせてきていた。今日の夕飯は二人の好きなカレーをつくることにした。一人暮らしも長くなって、美幸の作る料理を覚えたりして、レパートリーも増えてきた。それを一緒に食べるのも当たり前になってきている。
美幸が帰ってきた。着替えを終えるとお腹が空いたと言うのですぐに夕食にした。美幸はおいしいと言ってお替りをしてくれた。今日は美幸が疲れているようなので僕が後片付けをした。そしてコーヒーメーカーでコーヒーを入れて二人で飲み始めた。
「美幸、話があるけど」
「何? 改まって」
「『恋愛ごっこ』のことだけど」
美幸が緊張するのが分かった。
「昨日のことでよく分かったんだ。自分の本当の気持ちが」
「本当の気持ちって」
「美幸を妹としてではなく一人の女性として思っていると」
「私はいつもお兄ちゃんのことを一人の男性と見ていたわ。だからお兄ちゃんにも早く気づいてもらいたかった」
「それでもう『恋愛ごっこ』は終わりにしないか? もっと自由に美幸と付き合ってみたいと思うから」
「良かった。『恋愛ごっこ』を終わりにして、何もなかったことにしようと言うのかと思って心配した」
「僕がそんなこと考えるはずはないだろう。美幸を離したくないと思っているのに」
「昨晩、いたずらをし過ぎたのでお兄ちゃんに嫌われたかと思って」
「確かにやり過ぎだったけど、我慢できなくなった。それで僕の本心が分かったからよかった」
「それじゃあ、もう『ごっこ』の範囲もなくなったのね」
「なくしよう。それでいいのか、美幸は」
「はい」
そう言って僕をじっと見た。
「じゃあ、お風呂の準備をしてきます。先に入っていい?」
「ああ、先に入って」
美幸は寝室へ入って行った。お風呂はもう沸かしてある。そしてお風呂に入った。『恋愛ごっこ』はやめようと言ったけど、これから美幸とどういうふうに接していこうか、美幸はなにをしてくるのかを考えていた。
美幸がお風呂から上がってきたので、僕が続いて入った。僕がお風呂から上がると美幸はリビングにいなかった。
寝室に入っていくと美幸は僕の布団に入って顔だけ出していてこちらを向いていた。美幸ははにかんだような目つきで僕をじっと見ていた。
僕は空いている左側に入ろうと布団をまくった。美幸は何も着ていなくて裸のままだった。いつもはパジャマを着ているのに、美幸の生まれたままの姿が目に入ってきたので驚いた。小さい時には一緒に裸になってお風呂に入っていたが、大人になってからの美幸の裸を見るのはもちろん初めてだった。
色が白くて手足がすらっと長い綺麗な身体だった。一瞬のことだけど目に焼き付いた。でも僕は目をそらして布団を元に戻した。
「お兄ちゃん、布団に入って」
僕は気を取り直して布団の中に滑り込んだ。美幸が抱きついてくる。瞳と初めて交わったのは僕が発熱して朦朧としていた時で、もちろん瞳の裸なんか見ていなかった。瞳の裸をみたのはずいぶん後になってからだった。
美幸が抱きついてきているのに合わせて僕も美幸を抱き締めていた。でも僕の身体が反応していないことに気がついた。瞳とはこうはならなかったのにどうして? 気にするとますます反応しないことであせってくる。可愛い美幸が抱きついてきているのに、本当にどうしてだろう。
僕の手が動いていないことに美幸は気づいた。
「どうしたの、お兄ちゃん、思いどおりにして、お願い」
「美幸、だめなんだ」
「何が?」
「何がって、あそこがいうことを聞かない。EDになったみたいだ」
「どうして、私がいやなの?」
「そんなことはない。大好きだ」
「それならどうして? 飯塚さんとはできたのでしょう。私ではだめなの?」
「僕にも分からない。少し時間がほしい」
「分かった。じゃあ、いつものように後ろから抱いて」
「ああ」
後ろから抱き締めると、美幸はこの前のようにお尻を突き出してきた。僕はそれを受け止めたが、やはりだめだった。あの時とは状況が全く違う。美幸もお尻の感触でそれが分かったみたいでやめてしまった。
僕は美幸にすまなくて黙って抱いていただけだった。美幸のすすり泣く声が聞こえてきた。しばらくするとそれは寝息に変った。僕は少しほっとした。僕はいろいろなことを考えていたが、眠ってしまったみたいだ。
翌朝、目が覚めたら、いつものように美幸はこちらを向いて僕に抱きついていて腕の中にいた。
「美幸、昨晩はごめん。せっかく美幸がそんな気持ちになってくれたのに」
「お兄ちゃん、気にし過ぎ、そのうちなんとかなるから」
「時間が解決してくれるかな?」
「私にも分からないけど、お兄ちゃんの気持ち次第だと思う」
「僕の気持ち次第か? いろいろ考えてみてはいるけど」
「起きましょう」
そういって、美幸はバスタオルを身体に巻いてバスルームへ入っていった。それからいつものように二人は朝食を食べて、美幸が先に出勤して、僕が後から出勤した。
◆ ◆ ◆
その日一日は美幸からLINEが入らなかった。LINEを入れても既読にはならなかった。気になったので早めに帰宅した。夜遅くなっても美幸から何の連絡も入らない。美幸はもう僕の顔を見たくないのだろうか。
とうとうその日、美幸はマンションへ帰っては来なかった。突然、家出してしまった。僕が悪かったんだ。美幸に恥をかかせてしまった。美幸の惨めな気持ちが痛いほど分かった。
次の日、とりあえず僕は出勤したが、落ち着かない。美幸の会社へ電話して出勤しているか確認した。今日から夏休みをとっているとのことだった。そうなら一言連絡があってもよさそうなのにと思った。ひょっとして、実家へ帰っている? そう思って父さんに電話した。
「父さん、美幸が帰ってない?」
「ああ、昨晩、遅くなって突然帰ってきた。美幸は夏休みだと言っていたが、どうも元気がなくて」
「帰っていたのなら安心した。何も言わないで突然いなくなって心配していたので」
「理由を聞いても何も言わないので。誠と何かあったのか?」
「まあ、ちょっとね。僕も今日の午後から休みを取ってすぐに帰省するから、母さんと美幸にもそう伝えておいてください」
◆ ◆ ◆
僕は新幹線の中でもずっと考えていた。どうして美幸の時はあんなふうになってしまったのだろう。そしてその原因が二人の小さいころにあるのではないかと思うようになった。それなら思い当たることがある。解決策が見えてきた。
午後6時までには実家に着いた。1年と3か月ぶりの帰省になった。玄関を入ると母さんが迎えてくれた。
「美幸のことで心配かけてごめんなさいね」
「こちらこそ、ご心配をかけました」
リビングに入ると父さんと美幸がソファーに座っていた。それで母さんと3人でソファーに座ってもらった。
「父さん、母さん、美幸とのことは距離を置いて考えたいと言って、僕は東京へ就職することにしました。美幸が僕のところへ来て一緒に生活するようになって、僕は美幸を一人の女性として好きだということが分かりました。美幸も僕を一人の男性として好きになってくれました。それで父さんと母さんにお願いがあります。二人が兄妹としてではなく、一人の男性と一人の女性として、結婚を前提にして付き合うことを許してください。そして母さんには、二人はもう大人になったので、子供のころに美幸とは絶対にしてはいけませんと言われた『パパママごっこ』をすることを許してもらいたいのです。どうかお願いします」
「父さんは二人が結婚を前提に付き合うのは賛成だ。できることならそうなってもらいたいとずっと思っていた」
「美幸はそれでいいんだね」
「はい」
「母さんは?」
「私は誠には美幸を守ってもらいたいと思っていました。結婚して守ってくれるのなら言うことはありません。それと二人はもう立派な大人になったのだから『パパママごっこ』をして愛を確かめ合ってほしいと思っています。誠、どうか美幸のことをお願いします」
「ママ、私もようやく分かった。お兄ちゃんはママに私との『パパママごっこ』を封印されていたのね。子供のころに美幸とは絶対してはいけませんと。私もそのことを覚えている。だから私を相手にするとだめになって、どうしてなのかと悩んでいました。これで封印が解けたので、きっと大丈夫だと思います」
「僕も母さんにそう言ってもらって何かが吹っ切れた気がしています」
「じゃあ、久しぶりに4人で夕食にしよう。母さんと美幸が張り切って作ってくれたからね」
楽しい夕食だった。4人で一緒に食べたのは僕が就職して上京する時だった。あれから1年以上が経っていた。母さんが後片付けをするのを美幸が手伝っていた。それが終わると母さんは僕の荷物を持って2階へ上がっていった。
父さんはコーヒーメーカーでコーヒーを入れている。父さんはコーヒーが好きでいつも食事後はコーヒーミルで挽いて入れて飲んでいて、僕たちも時々飲ませてもらっていた。
コーヒーでなければジョニ黒の水割りかロックを飲んでいた。大学生になってから時々せがんで飲ませてもらっていたので、ジョニ黒が好きになった。今では部屋に必ず1本置いている。僕のコーヒー好きとジョニ黒好きは父親譲りだ。
4人分のコーヒーが入った。母さんが2階から降りてきた。二人の浴衣を持ってきてくれた。
「2階の真ん中のお部屋に二人のお布団を敷いておいたから、それとこれはお父さんと私の浴衣だけど二人が寝るときに着て下さい。浴衣は前がすぐにはだけるから注意してね。それから、誠、美幸にはまだ赤ちゃんは早いから気をつけてあげね。枕もとに置いておいたから、ちゃんと使ってね」
父さんは聞こえなかったふりをしている。僕と美幸はお互いに顔を見合わせた。美幸はすぐに恥ずかしそうに下を向いた。僕はなんとなく緊張してきた。このままではまたEDになりかねない。それよりも美幸が緊張している。
父さんはあきれたように母さんを見ている。母さんは言い過ぎたかなと思っているみたい。4人はコーヒーを黙って飲んだ。お風呂が沸きましたとのアナウンスが聞こえた。
「誠がまず入ったら」
「美幸から入ったら」
「お兄ちゃんから先に入って」
それで僕は浴衣を持って浴室へ行って先に入った。久しぶりの我が家のお風呂はゆったりしていて疲れがとれるような気がした。両親に話して気が楽になったからかもしれない。美幸も母さんの封印が解けたと言っていた。そのせいかもしれない。
僕が浴衣を着て上がると美幸も浴衣を持って浴室に入った。リビングには父さんだけがいて、水割りを作って手渡してくれた。冷たくてとてもおいしい。
「誠、美幸のこと頼むな。お前たちはやはり赤い糸で繋がっていた。母さんと二人、こうなることを望んでいた。でもお前たちの負担になってはいけないと口には出さなかっただけだ。分かったと思うけど、母さんの喜びようはあのとおりだ」
父さんも喜んでくれていた。母さんは父さんが言うとおり、それ以上だったに違いない。これで封印は完全に解かれた。
お風呂から上がった美幸がリビングに入ってきた。頭にバスタオルを巻いている。赤い花模様の浴衣がとても似合っている。
「パパ、私にも水割りを作って」
父さんは水割りを作って手渡した。
「おいしい、緊張が解けてほっとするね」
「そうだね、パパも帰って来て一杯飲むと緊張が解けるから毎日飲んでいる」
そこへ母さんがやって来た。
「美幸が上がったから、お父さんと二人でお風呂に入るから誠たちはもう休んで」
そう言って、僕と美幸を促した。それで二人は手を繋いで2階へ上がった。真ん中の部屋は明かりが落としてあって、布団が2組敷かれていた。枕もとにはベッドサイドランプが灯っていた。
それを見て、いつもと違って美幸の方が緊張している。僕は美幸の手を引いて布団に座った。美幸を引き寄せるとようやく抱きついてきた。
美幸は下着をつけていなかった。浴衣はまえがはだけやすい。母さんが言ったとおりだった。僕は美幸のはだけた胸から愛し始める。僕はもうEDが回復している。それが嬉しかった。美幸にもそれが分かったと見えて僕の首に腕を回してきた。
それから二人は夢中だった。お互いが求めていた。二人が一つになったと思ったとき、美幸はひどく痛がった。それで母さんの準備してくれたものを使うまでもなかった。僕がほどほどで止めておいたからだ。
それでも美幸は僕がEDを脱したのが嬉しかったみたいだった。抱きついてそのまま眠ってしまった。
◆ ◆ ◆
翌朝、目が覚めたら、いつものように美幸はこちらを向いて僕に抱きついていて腕の中にいた。安らかな寝顔だった。いつものようにその寝顔を美幸が目を覚ますまで見ていた。
目を覚ました美幸は僕を眩しいように見てはにかんだ。それがとても可愛くて思わず抱き締めてしまった。ここが実家でなかったら僕はまた美幸を愛し始めていただろう。
「おはよう。大丈夫だった。起きようか?」
「痛かった。でもお兄ちゃんのEDが治ってよかった」
「原因が取り除かれたからもう大丈夫だ」
それから二人は自分の部屋で身づくろいをした。そして二人で手を繋いで降りて行った。リビングへ入っていくと両親が心配そうにじっと二人を見た。僕と美幸がニコニコしているのを見てようやく安心したようだった。
「母さん、ありがとう。美幸と仲直りできたから」
僕は照れていてそうとしか言えなかった。
「よかったわね、美幸」
「ええ」
美幸は顔を伏せて恥ずかしがった。朝食が準備されていて、4人で食べた。美幸と相談して、今日の午前中はそれぞれの部屋の片づけをすることにした。
僕は自分の部屋の片付けを終えると真ん中の部屋の様子を見に行った。起きてそのままにしてきたから綺麗にしようと思ったからだった。中はきれいになっていて布団も整えられていた。
そういえば母さんが2階へ上がって来ていた。母さんが掃除してくれたのだと思った。僕たちのことをそれほどまでに気にしてくれていたんだ。そこへ美幸がやってきた。
「この部屋を綺麗にしようと思ってきたけどもう綺麗になっている」
「ママがさっき来ていたから掃除してくれたみたい。私がしなければいけないのにちょっと恥ずかしい」
「母さんは僕たちのことがとっても気になるんだね」
「さっき、ちょっと話したけど、二人がこうなってよっぽど嬉しかったみたい」
「そうみたいだね。ところで母さんは?」
「買い物に行くと言って出かけた。それでお兄ちゃん、せっかく二人だけになったから、久しぶりに『パパママごっこ』してみない? もうママも許してくれたから」
美幸が僕に抱きついてくる。そして僕のズボンを脱がせにかかる。昔のことを思い出してきた。僕も美幸のスカートを脱がせにかかる。
その後はもう夢中になって愛し合う。美幸はまだ慣れていなくて痛がっていた。美幸が辛そうなのでほどほどにして、抱き合って眠った。
ドアの開く音で二人は跳び起きた。母さんが帰ってきた。もう母さんのことを気にしなくても良いのに、二人は顔を見合わせて笑ってしまった。そして寝乱れた布団をきちんと直した。
午後は二人で大学のキャンパスへ行って、それから公園を散歩することにした。久しぶりに二人で散策を楽しんだ。今までは兄妹だったけど、今は恋人同士になっている。でも美幸は相変わらず、僕のことをお兄ちゃんと呼んでいる。
その日は母さんが二人のためにお祝いの夕食を作ってくれた。僕の好きな牛肉のスタミナ焼や治部煮を作ってくれた。美幸の好きなグラタンと茶碗蒸しも作ってくれた。お昼にいなかったのは、買い出しに行っていたようだ。4人でお酒を飲みながら楽しく食べた。
その晩も二人は2階の部屋で愛し合った。美幸も徐々に慣れてきて、僕は最後までいくことができた。美幸もそれが分かって僕にしっかりと抱きついてきた。母さんが用意してくれたものがようやく役に立った。
次の日、二人は東京へ戻った。午後に実家を出発して東京駅についたのは夕刻だった。丁度良い機会だと思って、近くのホテルのメインダイニングで食事をした。
僕は二人が結ばれた記念に何かしたかった。いや婚約の記念にと言っても良いかもしれない。美幸はニコニコしていて機嫌が良い。僕は美幸を迎えに行って、両親の許しを得て、しかも美幸と結ばれて祝福されたことが嬉しかった。
マンションに帰ってきた。ずいぶん久しぶりに帰ってきたような気がした。美幸もそう感じているみたいだった。明日は二人とも夏休みが一日残っているからゆっくりできる。
美幸がお風呂の準備をしてくれた。そして実家で着ていた浴衣を渡してくれた。着心地が良くて、前もはだけやすいのが気に入ったので、母さんからもらってきたと言っていた。
僕に先に入ってくれというので先に入った。上がるとすぐに美幸が入った。僕は水割りを飲んで、美幸が上がるのをソファーで待っている。美幸のために水割りを作っておいた。
美幸があの赤い花模様の浴衣を着てこっちへ来た。一目見ただけで浴衣の下は何もつけていないことが分かった。ちょっと目のやり場がない。僕はすぐに水割りを手渡した。美幸はそれをゆっくり飲みながら言った。
「明日はもう一日夏休みだし、今日はお兄ちゃんとゆっくりしたいと思って」
「ゆっくりって」
「実家ではママに見張られているような気がして、していても落ち着かなかった」
「母さんは僕たちにとても気を使ってくれて見守ってくれていたのだと思うけど、美幸の言うとおり、見張られているような気もして、また『パパママごっこ』はしてはいけませんよと言われるような気がしていた」
「お兄ちゃんはよっぽどママから言われていたことが重石《おもし》になっていたのね。だからEDにもなったのね」
「母さんに、しても良いと言われたことが大きかった。それでできるようになった」
「家に一人で着いたとき、ママにお兄ちゃんが私としようとしたらEDになったと相談したの。それにお兄ちゃんがママから私と『パパママごっこ』をしては絶対ダメといわれていたことを気にしていたことも話したの」
「それで母さんは何と言っていた」
「私は二人に良かれと思って言ったのに、誠を苦しめることになっていたのねと言って、とても悲しそうだった」
「それで僕に気を使っていろいろ言ってくれたんだね」
「そう思う。二人が次の朝に降りて行ったときのママの顔を見た?」
「ああ、とっても嬉しそうだった」
「それじゃあ、もう寝ましょうよ」
美幸は僕の手を引っ張って寝室に入った。そして僕に抱きついてきた。どうしたんだ。美幸は実家の時と違ってとても積極的になっている。実家ではこれが美幸かと思うほど、おしとやかで、おとなしかった。やはり美幸も母さんを意識していたのか?
母さんが言っていたとおり、浴衣は前がはだけやすい。それが刺激になって僕たちは夢中で愛し合った。美幸はもう愛し合うことにすっかり慣れてきていた。夜は長くて明日も休みだ。二人を躊躇させるものは何もない。
美幸が上に乗ってくる。いつもは抱きついているのに身体を起こしてまたがってきた。その美幸を下から見上げるととても綺麗に見える。こんな綺麗な美幸を初めて見た。
母さんが用意してくれたものを持って帰ってきていたが役に立った。僕も部屋に準備していたが、瞳のために準備したものだった。それは美幸には使いたくなかったので廃棄していた。
愛し合って疲れると二人は抱き合って眠った。夜中にどちらかが目を覚ますと寝ていても構わず愛し始める。どちらもそれを嫌がらない。美幸は快感が増してきていた。それが一晩中続いた。
◆ ◆ ◆
翌朝、目が覚めたら、いつものように美幸はこちらを向いて僕に抱きついていて腕の中にいた。今日は夏休み最後の日なので、一日中、美幸と二人、ベッドの上で過ごすことにした。
でも、お腹が空いたので一休みすることにした。美幸が朝食を作ってくれた。僕は後片付けをしてからシャワーを浴びた。熱いシャワーが気持ち良い。
バスルームのドアが開いて、裸の美幸が入ってきた。眩しいほどの裸身だった。でもチラ見しただけですぐに浴室を出て、バスタオルを腰に巻いて、リビングのソファーに座った。
「喉が渇いた」
そう言って、シャワーを浴びてきた美幸もバスタオルを身体に巻いたままソファーに座った。僕は水割りを作って美幸に渡した。美幸はそれをおいしそうに飲んでいる。僕も作って喉を潤す。冷たくてとってもおいしい。
「こんなおいしい水割りを始めて飲んだわ、もう一杯作ってくれる」
美幸は水割りのお替りをした。それをゆっくり飲みながら僕に言った。
「ソファーで『パパママごっこ』をしてみたい。小さいころ、パパとママがソファーでしていたみたいに」
「覚えているのか」
「お兄ちゃんと覗いていたのを覚えている。ねえ、お願い」
そう言うと美幸は抱きついてきた。ソファーで愛し合うことは何故か今まで思いつかなかった。
ソファーではベッドではとれない体位が容易にとれる。愛し合っているうちに、美幸はその良さに気づいたようで、僕にいろいろねだってくる。それを続けていると、美幸は快感で昇り詰めるようになっていった。覚えたてのセックスは楽しくて病みつきになる!
それから3か月後の10月吉日に僕たちは結婚した。義理の兄妹が結婚するにはどうすべきかを事前に調べたが、特段の問題はなかった。調査結果は以下のとおりだった。
義理の兄妹(姉弟)が戸籍上で血縁がない場合は、兄妹(姉弟)は結婚できる。何の特別な手続きも必要ない。普通に婚姻届を提出すればOK。例えば、実子と養子の兄妹、両方が養子の兄妹、親が再婚した連れ子同士で血の繋がりがない場合が該当する。
◆ ◆ ◆
結婚式は実家のある市内の式場で4人の家族だけで行うことにした。父さんは結婚式が済んだら、4人でドライブして昔、両親が出会った民宿に行ってみないかと誘ってくれた。
僕たちの小さい時にも一度4人で行ったことがあると言う。そういえばそんなこともあったように思った。美幸は覚えていなかったが、行ってみたいと言った。
父さんが連絡をとってみたところ、オーナー夫妻はもう亡くなっていて、息子さん夫妻が民宿を再開しているとのこのことだった。それでも4人で行って1泊することになった。
◆ ◆ ◆
結婚式を挙げてお祝いの食事を終えてから、4人は車に同乗して民宿へ向かった。2時間ほどのドライブで民宿に着いた。両親は外観がほとんど変わっていないと言っていた。僕はほとんど覚えていなかった。
中に入るとオーナー夫妻が部屋に案内してくれた。部屋はほとんど変わっていないがベッドや設備が新しくなっていると両親が言っていた。
夕食前にお風呂に入ることになった。案内されたので父さんと母さんが先に一緒に入った。ここで一緒にお風呂に入るのは初めてだと言っていた。
次に僕たちが入ることになった。僕と美幸はまだ二人でお風呂に入ったことがなかった。それはマンションのお風呂はそんなに大きくなかったし、二人ともお風呂はゆっくり入りたい方だったからだ。良い機会だと二人で入ることにした。
僕が先に入って浴槽に浸かっていると、美幸が恥ずかしそうに入ってきた。いつもと感じが違っている。美幸がかけ湯をして隣に浸かった。
「二人で入るのは初めてだから、僕が洗ってあげよう」
「いえ、私が先に洗ってあげる」
僕が浴槽から上がって座ると美幸がタオルにバスソープをつけて、背中から洗い始めた。背中を洗い終えると前を洗うと言って僕を立たせた。今度は前から、肩、胸、お腹、大事なところ、脚と洗ってくれる。
そしてお湯をかけて石鹸を洗い流して、最後に「これはおまけ」と言って僕のあそこにキスしてから口に含んで吸ってくれた。突然のことで驚いた。それから美幸は何事もなかったように自分の髪を洗い始めた。
美幸が髪を洗い終わると、今度は僕が洗ってあげると美幸を立たせて、背中から洗い始める。肩から背中、腕を上げさせて脇の下をゆっくりと洗って、それからお尻、そして脚の裏側へと洗っていく。
今度はこちらを向かせる。美幸はもううっとりしている。肩から、首、脇の下と乳房は特に丁寧に洗って、お臍とお腹を洗う。それから脚を広げさせて、大事なところは手でゆっくり丁寧に洗った。力が抜けたのか美幸は僕の腕につかまってきた。それでしっかり支えて、脚を洗った。
それからお湯をかけて石鹸を洗い流す。最後に「これはおまけのお礼」と言って、左右の乳首をなめて口に含んで吸ってやった。美幸は突然のことで驚いていたが、僕は「おしまい」と言って、座って自分の髪を洗い始める。
僕が髪を洗っていると、美幸が「これはおまけのお礼のお礼」と言って、座っているお風呂の椅子の下に後ろから手を入れてきて、僕の大事なところをつかんだ。目をつむって髪を洗っていたので何が起こったのか一瞬分からなかったが、すぐに美幸のいたずらだと気がついた。
「やめろよ」と言っても笑っていてなかなかやめない。硬くなってくるのを確かめるとようやくやめてくれた。それから二人で浴槽につかって仲良くお風呂を上がった。
「洗ってもらうと気持ち良くて気が遠くなりそうだった」
バスタオルでお互いを拭きあった。美幸といると何をしても楽しい。
◆ ◆ ◆
夕食は4人で食べた。オーナー夫妻が挨拶に来てくれた。前のオーナー夫妻は10年ほど前に続いて亡くなったとのことだった。それでここを改修して民宿として再開したという。カラオケがあったラウンジも改修して、オーナー夫妻がゆっくり過ごせる部屋にしたと聞いた。
食事をしながら、父さんはここで母さんと前オーナー夫妻の紹介で出会ったこと、ここで母さんに「恋愛ごっこ」をして過去に上書きをしてみないかと誘ったこと、そしてここの部屋で初めて結ばれたことや愛を育んでいったことなどを話してくれた。母さんは笑顔で聞いていた。
出会いとは不思議なものだ。父さんと母さんがここで出会わなければ僕と美幸が兄妹になることもなかったし、まして結婚することもなかっただろう。二人の出会いの縁を取り持ってくれた前オーナー夫妻に感謝してもしきれない。
夕食後、両親と僕たちはそれぞれ部屋に戻った。それから明朝は4人で岬まで日の出を見に行くことになった。
部屋に戻るとすぐに美幸が抱きついてきた。それからなんどもなんども愛し合って、抱き合って眠った。父さんと母さんもきっと愛を確かめ合ったと思う。
◆ ◆ ◆
薄明るくなって目が覚めた。抱きついている美幸を揺り起こす。まだ寝ぼけている美幸を促して着替えをして下へ降りていく。両親も丁度降りて来たところだった。4人で岬の方へ歩いて行く。
両親が手を繋いで僕たちの先を歩いている。その後を僕と美幸も手を繋いで歩いている。僕は思い出した。
「父さん、昔4人でここへ来た時、父さんは美幸と手を繋いでいて、母さんは僕と手を繋いでいたと思うけど、そうだったよね」
「そうだった。誠はよく覚えていたな。美幸は父さんに懐いていたし、誠も母さんに懐いていた。だから4人で住もうと思った。そしてここで母さんに『恋愛ごっこ』はもうやめて父さんと一緒に住んでくれないかと言ったんだ。今日は4人で思い出の場所に来られて本当によかった」
岬まで来ると丁度朝日が昇るところだった。二人の門出、いや家族4人の門出にふさわしい綺麗な日の出だった。
これで僕たち義理の兄妹の「恋愛ごっこ」のお話はおしまいです。めでたし、めでたし!
結婚しても美幸が僕をお兄ちゃんという呼び方は変わらなかった。本人も気にしているようだったが、いままで兄妹だったから仕方ないとか、お兄ちゃんが言いやすいとか言って、言い続けていた。
でも子供が生まれるとさすがに人前でお兄ちゃんというのはおかしいと思ったのか、呼び方がパパになった。それでようやく僕はお兄ちゃんを卒業できた。