「おじさん~写真見に来たよ~」
「お!雨内くん。用意できてるよ~」
おじさんが手招きしてバックヤードに呼ぶ
写真を見始めて数分
「おじさん、これ絶対僕以外に見せないでというか見せるな」
「なんで~?おじさん智也くんの子供のころはかわいいと思うけどなぁ…」
「いやだ。かわいくない。見せるな」
そう、この写真は…やっぱり黒歴史の塊だった
僕と、幼い少女…(僕は覚えていないけど)…が二人で抱き合ったり
おままごとしたり
なぜか古本屋の常連さんに抱っこされてたり
そんな幼稚園の写真から
小学校に入って
ランドセルを背負って、古本屋をバックにとった写真とか
夏休み学校の図書室で本を借りすぎて持てなくて死にかけてる僕の写真とか…
女の子と海ではしゃいでる写真とか…
でも女の子が出てきたのは小学4年生までだ
ちょうど僕が陸上にのめりこみだした時
そこからの写真は
僕が大会で一位を取った時の写真とか走ってる時の写真とか
準優勝で泣いてる時の写真とか
陸上の写真ばっかりだから
…そこからやっぱりあの女の子は出で来なかった
「ねぇおじさん、この女の子って誰かわかる?」
「さぁ…おじさんには…確かご両親の名前が羽瀬さんだったような…雨内くんのお父さんに聞けば…」
母は死んでるし…僕のあのの事件の時に病気で死んでるからなぁ…
「そうですか…父とは話してないっちゃ話してないからなぁ…」
「じゃあ家のアルバム見るとか」
「そうするか…」
どこにしまったっけ
「ところで雨内くんはもう陸上やらないの?おじさんは活躍楽しみにしてるんだけど…」
「…ん…たぶん…もう二度とやらないかな…もう二年前にやらないって決めたから」
「そう…」
たぶん察したのだろう
僕の母は二年前に亡くなっている
そして僕が陸上をやらなくなったのも二年前
二年まえ…あの日、母が亡くなった日と陸上総合体育大会略して陸上総体の日がかぶってなかったら
そんなのは後付けのいいわけだ
陸上と、母を天秤にかけた結果だから仕方ない
____二年前 総体の日
僕は中学一年生だけど
総体の花形4×100mリレーの選手に選ばれた
運悪く補欠は二人とも休み
ほかの僕の出る種目
100mとハードルでは絶対に怪我できない状況だった
幸い怪我はしなかったけど
リレー本番20分前
「雨内!雨内のお母さんがもうすぐだって!」
「えっ」
お母さんは病気だったけど今日は
『智也の大会だもんね。腕はって料理しなきゃ』
と一時退院していた
「今行きます!どこの病院ですか!」
「先生が連れてってやる」
陸上より僕思いだった母を優先して僕の通ってる、波澤中学校は、リレーを棄権せざるおえなくなった
そしてお母さんが死んで、通夜と葬式を終えて学校へ行くと
リレーメンバーに呼び出され
『おまえのせいで』
『お前のせいでリレーに出れなくなったんだぞ』
『20分くらい我慢しろ』
『陸上を優先しろよ』
などさんざん言われ殴られ蹴られ
僕は考えて
もう二度と陸上をしないと決めた
だから今の陸上をやらない僕がいる
昔っから好きだった読書にのめりこんだ僕がいる