私は羞恥を悟られないようにアイスコーヒーを飲んだ。

「なに赤くなってんの?」
「え!?」
 賢司の指摘に、私は慌てて頬に手を当てる。

「見ないでよ変態」
 むしろ変態は自分かもしれないんだけど。

「なんだよそれ」
 賢司が苦笑する。

 それから、真顔になって言った。
「熱中症、なりかかってる?」

「ちょっと走ったせいだよ」
 私はそうとしか返せなかった。まさかマンガを思い出したせいで妄想した、なんて言えない。

 賢司が腕を伸ばして私の額に手を当てる。

「やっぱ熱いよ。ここでしっかり休憩していこう。課長には連絡しておく」
 賢司はすぐにスマホでメールを送った。

「……ごめん」
 たぶん熱中症じゃないんだけど、どう否定していいのかもわからない。

 私はそのまま、賢司と喫茶店で時間をつぶした。





 しばらくすると、冷房のせいで体が冷えてしまった。雨に濡れたから余計だ。

 上着はびしょびしょで着れないし。
 アイスコーヒーなんて頼むんじゃなかった。余計に冷えちゃう。

 私は自分を抱くようにして両腕をさすった。一瞬はいくらかマシになるけれど、寒いことに変わりはない。

「熱中症は寒気が出ることもあるらしいけど、本当に大丈夫か?」
「冷房のせいだから」
 私は苦笑した。

 すると、賢司が急に席を立った。