二人で急いで駅に向かったのだけど、残念ながら途中で雨が降り出した。

 滝のように降る雨になすすべもなく、私たちは近くの喫茶店に逃げ込んだ。

「上着、大丈夫か?」

 賢司に聞かれる。
 私はさっき、手に持った上着を水たまりに落としてしまったのだ。おかげで上着はべちょべちょ。

「クリーニングに出せば大丈夫だと思う」

 エコバックがわりに持っていたビニール袋に上着を入れた。だけど今日はもう着れそうにない。このあとは帰社するだけだから良かった。

「良かった。しかし当分やみそうにないな」
 スマホで予報を見て賢司が言う。

「どうしよう」
「濡れて帰るか、タクシー呼ぶか」

「タクシー、経費で落としてもらえる?」
「さあ」
 賢司は首をかしげてスマホをテーブルに置いた。

 ふと、昨日見たマンガを思い出す。

 雨に降られた主人公と同期の男性が、なぜかラブホテルに雨宿りに入り、そのまま……という展開だった。そうして二人は恋に落ちてしまうのだ。

 マンガなら、私が賢司とそんな展開になるのかな。

 私は恥ずかしくなって俯いた。

 なんでこんなときに思い出しちゃうんだろう。どうして賢司との展開を想像しちゃうんだろう。ただの同期なのに。

 ああもう、マンガのばか!
 なんでラブホテルで雨宿りするの。現実的じゃないのに! 
 だからこそマンガになるんだろうけど!