ソイヤー!
筋鬼猿王はまっすぐにソリスに突っ込んできた。
慌ててソリスはステップを踏みながら回避をしようとする。しかし、闘志に燃える筋鬼猿王は狂気じみた眼差しでソリスの退路をふさぎ、徐々にフロアの隅へと追い込んでいった。
くっ!
もう一度マウントされたら、赤ちゃんになるまで殺され続けてしまう。ソリスは必死に退路を探すが、必死な筋鬼猿王の追い込みに逃げられそうになかった。
「くぅぅぅ……仕方ない……。やってやるわよ!!」
ソリスは覚悟を決めると、逆に一気に筋鬼猿王の方に飛び込んでいく。
馬鹿が!
筋鬼猿王の鮮烈な右ストレートがソリスの腕を砕く。
ぐふっ!
が、止まらない。ソリスは激痛をこらえながら、そのまま筋鬼猿王を押し倒し、逆にマウントポジションを取ったのだった。
「くっ! マウントくらいじゃ変わんねーよ!」
筋鬼猿王は下からソリスの額を撃ち抜く。
しかし、マウントされた状態では全然パワーは乗らない。ソリスは逆にその腕を取ると全体重をかけてへし折ったのだ。
ゴキィ!
壮絶な音が広間に響き渡る。
「グギャッ!! ふ、ふざけんな!」
筋鬼猿王は残った左腕で渾身の力を込めてソリスのこめかみを撃ち抜いた。
ゴフッ!
筋鬼猿王の上に倒れ込むようにして死んだソリス。
「ちっ! どけぃ!」
筋鬼猿王は慌ててソリスの死体を蹴り飛ばし、マウントを取りに行こうとしたが、砕けた右腕の激痛によろけ、間に合わなかった。
『レベルアップしました!』
黄金色に輝きながら立ち上がってくるソリスに、筋鬼猿王は右腕を押さえながらギリッと歯を鳴らす。
「こ、この、チート娘が!!」
「何を使おうが最後に立っていたものが勝ち……。それがここでのルールだわよ? ふふふふ……」
ソリスは顔を引きつらせ、必死に余裕を装いながら笑う。
「ふんっ! 赤ん坊にして踏みつぶしてくれるわ!」
筋鬼猿王はソリスに向かって猛然と突っ込んできた。
片腕となった筋鬼猿王なら、左腕を折ってしまえばもはや勝ち確定である。
「折れば勝ち……、折れば勝ち……」
ソリスはガードしながら全神経を左腕の動きに注いだ。
ぬぉぉぉぉ!
筋鬼猿王は左腕を大きく振りかぶって迫る。
ソリスは何とか左腕をつかもうとタイミングを計った。つかめたら勝ちなのだ。
だが次の瞬間、筋鬼猿王はいきなり後ろを向く。
へ?
ソリスは何が起こったのか分からなかった。
刹那、飛んでくる目のくらむような後ろ回し蹴り――――。
ゴフッ!
ソリスはもろに蹴りを胸に受け、吹き飛ばされる。
もんどりうって転がったソリスに、畳みかけるように筋鬼猿王が痛烈な蹴りを決め、ソリスの意識を断った。
『レベルアップしました!』
ソリスが復活すると、筋鬼猿王がソリスをマウントして、いやらしい笑みを浮かべながら見おろしている。それは最悪の展開だった。
くっ!
ソリスは必死に脱出しようとしたが、間に合わず、痛烈なメリケンサックの衝撃にまた意識を断たれる。
『レベルアップしました!』
うりゃぁ!
『レベルアップしました!』
そりゃぁ!
『レベルアップしました!』
無情にもどんどん小さくなっていく身体。
徐々にブカブカになっていく鎧の感覚にソリスは焦った。何とか抜け出そうとするものの、筋鬼猿王も必死である。なかなか隙を見せてくれない。
「ほれほれっ! 赤ん坊に戻してやるぞ!」
折れた右腕をかばいつつ、左腕で的確にソリスの顔面を捉え続ける筋鬼猿王。
『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』
レベルアップはするものの、子供へとなって行ってしまってどんどん力も弱くなっていくソリス。
『マズいマズいマズいマズい……』
殺される激痛で朦朧とする意識の中、必死に活路を探す。
「死ねぃ!」
筋鬼猿王が復活してきたソリスの顔面めがけ、こぶしを振り下ろした時だった。ソリスは必死にブカブカになった鎧の中に身体を滑らせる。
「あっ! 待て、貴様!」
筋鬼猿王は鎧の上から殴りつけたが、さすがにそれは効果がなかった。
その隙にソリスは鎧を持ち上げながら下からスルッと身体を引き抜く。
「畜生! ちょこまかと……」
逃がしてしまったことに顔をゆがめる筋鬼猿王。
ソリスは肩で息をしながら、ブカブカになってしまったチュニックのひもを結びなおす。これ以上殺されてしまったら抗うこともできない。ソリスはもうミス一つできないギリギリのところまで追い込まれてしまったことに口をキュッと結んだ。
「子供ではもうどうすることもできまい……」
筋鬼猿王はニヤリと笑いながらソリスに迫っていく。
ソリスは間合いを取りながら後ろへ、横へと逃げていった。
「これで決まりだ!」
筋鬼猿王はソリスに向かってダッシュをすると鋭い蹴りを放つ。
ひぃっ!
ソリスはガードしながら後ずさりで躱した。
「死ねぃ!」
直後、そのまま鋭い渾身の後ろ回し蹴りで一気にソリスの顔面を狙っていく筋鬼猿王。絶妙のタイミングでの会心の一撃、この蹴りをかわすのは素人には難しいはずと、筋鬼猿王は勝利を確信した――――。
ところが、ソリスはまるでバレエを習っている子供のように、信じられない身体の柔らかさでのけぞって、これをかわしたのだった。
……へ?
手ごたえのなさに焦る筋鬼猿王。
これを好機とそのまま筋鬼猿王の左腕に飛びつくソリス。
「死ぬのはあんたよ!」
ソリスは足を筋鬼猿王の肩に絡ませながら、渾身の力を込めて腕を折りに行く。
くぁぁぁぁ!
筋鬼猿王は慌ててソリスを振り払おうとするが、子供とは言えレベルはすでに120を超えている。そう簡単には離れない。
離せぇぇぇぇ!
喚きながら筋鬼猿王はソリスを床に叩きつける。
くはっ!
しかし、しがみついて離れないソリス。このチャンスを失ったらもう二度と勝機はない。
ぐぉぉぉぉぉ!
必死の形相で腕を逆方向へ捩じっていく。
止めろぉぉぉ!
筋鬼猿王が叫んだ時だった。
ゴキィ!
鈍い音がフロアに響いた。
筋鬼猿王はまっすぐにソリスに突っ込んできた。
慌ててソリスはステップを踏みながら回避をしようとする。しかし、闘志に燃える筋鬼猿王は狂気じみた眼差しでソリスの退路をふさぎ、徐々にフロアの隅へと追い込んでいった。
くっ!
もう一度マウントされたら、赤ちゃんになるまで殺され続けてしまう。ソリスは必死に退路を探すが、必死な筋鬼猿王の追い込みに逃げられそうになかった。
「くぅぅぅ……仕方ない……。やってやるわよ!!」
ソリスは覚悟を決めると、逆に一気に筋鬼猿王の方に飛び込んでいく。
馬鹿が!
筋鬼猿王の鮮烈な右ストレートがソリスの腕を砕く。
ぐふっ!
が、止まらない。ソリスは激痛をこらえながら、そのまま筋鬼猿王を押し倒し、逆にマウントポジションを取ったのだった。
「くっ! マウントくらいじゃ変わんねーよ!」
筋鬼猿王は下からソリスの額を撃ち抜く。
しかし、マウントされた状態では全然パワーは乗らない。ソリスは逆にその腕を取ると全体重をかけてへし折ったのだ。
ゴキィ!
壮絶な音が広間に響き渡る。
「グギャッ!! ふ、ふざけんな!」
筋鬼猿王は残った左腕で渾身の力を込めてソリスのこめかみを撃ち抜いた。
ゴフッ!
筋鬼猿王の上に倒れ込むようにして死んだソリス。
「ちっ! どけぃ!」
筋鬼猿王は慌ててソリスの死体を蹴り飛ばし、マウントを取りに行こうとしたが、砕けた右腕の激痛によろけ、間に合わなかった。
『レベルアップしました!』
黄金色に輝きながら立ち上がってくるソリスに、筋鬼猿王は右腕を押さえながらギリッと歯を鳴らす。
「こ、この、チート娘が!!」
「何を使おうが最後に立っていたものが勝ち……。それがここでのルールだわよ? ふふふふ……」
ソリスは顔を引きつらせ、必死に余裕を装いながら笑う。
「ふんっ! 赤ん坊にして踏みつぶしてくれるわ!」
筋鬼猿王はソリスに向かって猛然と突っ込んできた。
片腕となった筋鬼猿王なら、左腕を折ってしまえばもはや勝ち確定である。
「折れば勝ち……、折れば勝ち……」
ソリスはガードしながら全神経を左腕の動きに注いだ。
ぬぉぉぉぉ!
筋鬼猿王は左腕を大きく振りかぶって迫る。
ソリスは何とか左腕をつかもうとタイミングを計った。つかめたら勝ちなのだ。
だが次の瞬間、筋鬼猿王はいきなり後ろを向く。
へ?
ソリスは何が起こったのか分からなかった。
刹那、飛んでくる目のくらむような後ろ回し蹴り――――。
ゴフッ!
ソリスはもろに蹴りを胸に受け、吹き飛ばされる。
もんどりうって転がったソリスに、畳みかけるように筋鬼猿王が痛烈な蹴りを決め、ソリスの意識を断った。
『レベルアップしました!』
ソリスが復活すると、筋鬼猿王がソリスをマウントして、いやらしい笑みを浮かべながら見おろしている。それは最悪の展開だった。
くっ!
ソリスは必死に脱出しようとしたが、間に合わず、痛烈なメリケンサックの衝撃にまた意識を断たれる。
『レベルアップしました!』
うりゃぁ!
『レベルアップしました!』
そりゃぁ!
『レベルアップしました!』
無情にもどんどん小さくなっていく身体。
徐々にブカブカになっていく鎧の感覚にソリスは焦った。何とか抜け出そうとするものの、筋鬼猿王も必死である。なかなか隙を見せてくれない。
「ほれほれっ! 赤ん坊に戻してやるぞ!」
折れた右腕をかばいつつ、左腕で的確にソリスの顔面を捉え続ける筋鬼猿王。
『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』
レベルアップはするものの、子供へとなって行ってしまってどんどん力も弱くなっていくソリス。
『マズいマズいマズいマズい……』
殺される激痛で朦朧とする意識の中、必死に活路を探す。
「死ねぃ!」
筋鬼猿王が復活してきたソリスの顔面めがけ、こぶしを振り下ろした時だった。ソリスは必死にブカブカになった鎧の中に身体を滑らせる。
「あっ! 待て、貴様!」
筋鬼猿王は鎧の上から殴りつけたが、さすがにそれは効果がなかった。
その隙にソリスは鎧を持ち上げながら下からスルッと身体を引き抜く。
「畜生! ちょこまかと……」
逃がしてしまったことに顔をゆがめる筋鬼猿王。
ソリスは肩で息をしながら、ブカブカになってしまったチュニックのひもを結びなおす。これ以上殺されてしまったら抗うこともできない。ソリスはもうミス一つできないギリギリのところまで追い込まれてしまったことに口をキュッと結んだ。
「子供ではもうどうすることもできまい……」
筋鬼猿王はニヤリと笑いながらソリスに迫っていく。
ソリスは間合いを取りながら後ろへ、横へと逃げていった。
「これで決まりだ!」
筋鬼猿王はソリスに向かってダッシュをすると鋭い蹴りを放つ。
ひぃっ!
ソリスはガードしながら後ずさりで躱した。
「死ねぃ!」
直後、そのまま鋭い渾身の後ろ回し蹴りで一気にソリスの顔面を狙っていく筋鬼猿王。絶妙のタイミングでの会心の一撃、この蹴りをかわすのは素人には難しいはずと、筋鬼猿王は勝利を確信した――――。
ところが、ソリスはまるでバレエを習っている子供のように、信じられない身体の柔らかさでのけぞって、これをかわしたのだった。
……へ?
手ごたえのなさに焦る筋鬼猿王。
これを好機とそのまま筋鬼猿王の左腕に飛びつくソリス。
「死ぬのはあんたよ!」
ソリスは足を筋鬼猿王の肩に絡ませながら、渾身の力を込めて腕を折りに行く。
くぁぁぁぁ!
筋鬼猿王は慌ててソリスを振り払おうとするが、子供とは言えレベルはすでに120を超えている。そう簡単には離れない。
離せぇぇぇぇ!
喚きながら筋鬼猿王はソリスを床に叩きつける。
くはっ!
しかし、しがみついて離れないソリス。このチャンスを失ったらもう二度と勝機はない。
ぐぉぉぉぉぉ!
必死の形相で腕を逆方向へ捩じっていく。
止めろぉぉぉ!
筋鬼猿王が叫んだ時だった。
ゴキィ!
鈍い音がフロアに響いた。