「……あっつ」

校舎を出た瞬間、むわんとした空気が一気に全身にまとわりつく。

夏が好きだっていう人間の気が知れない。

「お、若葉(わかば)、お前今日もバイト?」

門へ向かって歩いていると、後ろからぽんっと肩を叩かれて聴き慣れた声がした。

声の主は、大西(おおにし)珠貴(たまき)。クラスメイトの一人だ。

「ん」

「そっか。頑張るな〜。けどお前がカフェとかやっぱなんか……」

「なに。悪い?」

「いや別に……悪いとは言ってねーべ。似合わねぇなぁって。若葉は面倒ごと嫌いなタイプじゃん。人の下で働くのとか向いてなさそうっていうか……スマイルサービスできんの?」


なんて、ガハガハと響くでけぇ笑い声が、セミよりもうるせぇ。