それからはどうやってお店を出て、礼央くんの家に行ったのかわからない。
気がつけば見慣れない部屋のベッドに座り、何度も絡める温もり。
7年ぶりに礼央くんと重ねる唇は、熱くて甘くてそれがまたわたしの胸を締め付ける。
わたしの初めてのキスは礼央くんとだった。
だけどいまのキスは知らない。
こんな礼央くん、わたしは知らない。
わたしが知ってるのは不器用だけど一生懸命でまっすぐに気持ちが伝わるもの。
こんな激しくて器用で気持ちいい触れ方をされたら、今日再会するまでの礼央くんの時間がどんなものだったのかを容易に想像できてしまう。

「……花耶」
「んー?」
「ずっと好きだった。忘れられなかった」
「うん」
「あーやばい」

礼央くんがわたしをぎゅっと抱きしめる。
なんだろう、この感覚……。
少しの違和感を覚えながらも、礼央くんの背中に手を回して抱きしめ返す。
鍛えてるのかな?
がっしりとした背中も、わたしは知らないや……。

「もう抱くから」

礼央くんがわたしをそっとベッドへ押し倒す。
付き合っていた高校時代、わたしたちは一度も最後までしたことはなかった。
初めての彼氏ですごく大好きだったけど、大好きだったからこそできなかった。
したかったけど勇気がでなかった。そこまではしたくなかった。していないことに特に意味はなかった。しなくてもいいと思っていた。大切にしたかった。
何でしなかったのかはわからない。
だけど、わたしたちはしなかった。それがすべて。