いま、どこで何をしてるのかな?
仕事を頑張ってるのかな?
彼女はいるのかな?
もしかして結婚して家庭をもっていたりするのかな?
ふとそんなことを考えてしまう時間は、いまもある。
わたしの中にはそれくらい、礼央くんが残っている。

「会いたかったよ」
「……花耶」

わたしの言葉を聞いた礼央くんは重ねた手を一度離して、わたしの手の下に自分の手を滑り込ませる。
そしてぎゅっと指を絡めて繋がれた。
礼央くんを見ると、熱っぽい瞳でわたしを映している。
大好きだった人。
会えない間も、心の中で何度も何度も考えた人。
「いちばん青春してたって思う瞬間は?」と聞かれると絶対に「高校生の時に礼央くんに全力で恋してたこと」って答える。
コンマ1秒も迷わず、即答できる自信がある。
そんな礼央くんがいま、大人になったわたしを見つめている。

「……俺んち、来る?」

その質問にも、コンマ1秒も迷わずに頷いていた。