「……花耶」
「……なに?」

仕事の話、高校の同級生の現在の話、そして高校の時の思い出話。
たくさん話したけど、いちばん懐かしく感じて心震えるのは、いまあなたの隣にいて視線を絡ませられること。礼央くんしか見えないくらいの距離にいること。

「……ずっと、会いたかった。花耶のこと、忘れられなかった」

わたしの手に自分の手を上から重ね、包み込むように指を絡められる。
7年ぶりの礼央くんの手の温もりに、胸がぎゅっと締め付けられる。

「……わたしも」

わたしと礼央くんは高校生の時に付き合っていた。
礼央くんはわたしの青春の全て。
そう言い切れるくらい好きだったし、わたしの全てが礼央くんだけだった。まだ青い高校生なりに、本気で恋をしていた。
わたしたちは高1の初夏から高3の秋と冬が混じりあう頃まで付き合っていて、終わる瞬間までこの恋に全力をかけていた。
別れたきっかけは進路や受験勉強への意識の違いだったかな?
もう考えないようにしていたし、綺麗に別れたつもりだったから心の奥底に閉まったせいでわからない。
わたしの中ですでに、大好きな人と全力で恋した高校時代の青春の思い出となっている。

「わたしも、礼央くんのこと忘れてないよ」

高校生の思い出は、礼央くん抜きでは語れないくらいずっとわたしのそばにいてくれた。ふたりで一緒にいた。
高校を卒業してから、大学生の時も社会人になってからも彼氏はできた。何回か恋をしたよ。
でもいつも、過去の恋愛を聞かれた時にいちばんに思い出すのは高校生の眩しいくらいの恋なんだよ。
礼央くんなんだよ。