初恋に終わりを告げる夜


***


桜庭涼太。
涼太に初めて出会ったのは、中学一年の時。
同じクラスになった涼太は容姿端麗、文武両道、明るく人望もあり、あっという間にクラスの人気者になった。
いつも彼はみんなの中心にいて私とはあまり接点がなかったけど、五月の体育祭の日にある出来事があった。

私と涼太はクラス選抜対抗リレーの選手に選ばれた。
勉強はそんなに出来なかったけど、運動は得意でリレーには自信を持っていた。

走る順番は私は二番目、涼太はアンカー。
トップバッターが好スタートを切り、八人中三位で私にバトンが回ってきた。
私は勢いよく走りだし、前の人の背中が目の前に見え、バトンを渡す直前で二位の人を追い抜いた。

だけど、三番目の人にバトンを渡す時、選手の入れ替えでゴチャゴチャしていたせいでバトンを落としてしまった。
最悪のバトンミスで一気に五位に転落。
申し訳なさに落ち込んでいたら、涼太が私のところまで走ってきて背中をポンと叩いた。

『気にすんな。俺が蓮川の分まで挽回してトップでゴールテープ切るから』

そう言うと、涼太は走って元の列に戻った。
わざわざ私を励ましに来てくれたことがすごく嬉しかった。
両手を組んで祈るような気持ちでリレーの経過を見守った。
その後、みんながバトンを繋いで二位まで上がってきた。
いよいよアンカー勝負。

『涼太、頑張れ!』
『お前ならイケる』
『ファイトー』

クラスメイトが大声を出して応援している。
涼太はグングンとスピードを上げて一位の選手を追いかける。
あと少し!
 
『桜庭くん、頑張ってー』

精一杯、声を張り上げて応援した。
涼太はゴール手前で前の選手を抜き、一位でゴールテープを切った。

『ヤバ、速すぎるだろ』
『涼太、すげぇ』
『やったー!』

涼太は喜ぶクラスメイトみんなに囲まれていた。
そして、私の方に走ってきてどや顔で言い放った。

『蓮川!約束通りトップでゴールしたぞ』
『すごいよ、桜庭くん!』
『サンキュ』

涼太は満面の笑みでハイタッチを求めてきた。
私は胸を高鳴らせながら手を出した。