初恋に終わりを告げる夜


さて、まだあと少し時間があるか……。
時計を見たあと、前々から行こうと決めていた場所に向かって歩きだした。

涼介さんと合流するのは嘘だ。
さっき、メッセージを送ったらまだ友達と飲んでいるみたいだった。
『あと一時間ぐらいしてから帰る。澄香も絶対にタクシーで帰ること!』なんて過保護なメッセージが届いた。
しかも、友達と笑い合っている写真も添付されていて自然と頬が緩んだ。
こういった些細なことで、涼介さんに愛されているなと感じる。

街灯が照らす夜の街を歩き、目的の場所に着くとドアを開けた。
ここはある人に教えてもらったバーだ。
 
「いらっしゃい」

バーの中に足を踏み入れると、ダンディなオーナーが出迎えてくれた。
私はバーのカウンターの右端に座った。
このバーはカウンターの十席のみのこじんまりとしたお洒落な店内。
心地よいジャズをBGMにバーテンダーがシェイカーを振る。
お客さんは二人組のサラリーマンが左端に座り、お酒を飲みながら談笑していた。

バーテンダーにギムレットを注文し、一口飲んだあと小さく息を吐いた。
初めて飲んだギムレット、ライムの酸味にほんのりとした甘みも感じられ、スッキリとした爽やかな味が口の中に広がった。

不意にドアベルが鳴り、なんとなくそちらに視線を向けたら見知った顔の男性と目が合った。
え、なんで?
 
「澄香?」

私の名前を呼んだ男性は眉間にしわを寄せた。