初恋に終わりを告げる夜


食事会という名の顔合わせで紹介された涼介さんは十九歳の大学生だったけど、落ち着いた雰囲気のある王子様みたいな人だった。
私は涼介さんの顔を見た瞬間、ハッと息をのんだ。
艶やかな黒髪を後ろに流し、アーモンド形の綺麗な二重の瞳が優しく細められ、『初めまして、澄香ちゃん』と私に声をかけてきた。
私は戸惑いを隠せないまま『初めまして、蓮川澄香です』と自己紹介した。
その日から、私は正式に涼介さんの許嫁となった。
とは言っても私はまだ中学生。
高校を卒業するまでは学業優先で、今まで通り過ごすことがお互いの両親を交えて話し合った結果だ。

両親は私に『桜庭グループの御曹司の許嫁として品行方正、付き合う友達は考えて行動しなさい』と言ってきた。
それだけ『桜庭グループ』という存在はあまりにも大きかった。

大学生になると、涼介さんとのお付き合いが解禁になった。
結婚することは決まっているのだから、歩み寄りは必要だと思った。
デートを重ね、お互いのことを理解するべくたくさん話し合った。
その時、一度だけ涼介さんに聞いたことがある。
『おじいちゃんたちが勝手に決めた結婚は嫌じゃないの?』と。
いきなり五歳年下の女が許嫁だと聞かされて文句のひとつでも出なかったんだろうか。
私と同じように諦めた恋があったんじゃないかと思ったからだ。

涼介さんは笑顔で『嫌じゃないよ。まあ、最初は勝手に決めるなよとは思ったけど、初めて会った時に澄香がいい子だったから俺が守ってあげようと心に決めたんだ』なんて言われ、胸がときめいた。
単純だろ私!とは思ったけど、涼介さんは本当に優しくて私のことを大切にしてくれた。
いつの間にか涼介さんの存在が私の中で大きくなり、今となっては誰よりも彼の事が大好きになったんだ。