いつも明るく笑っている涼太のこんな表情は初めて見た。
他人の理想を押し付けられて、涼太も辛いことがあったのかもしれない。
私は咄嗟に話題を変えた。
「そういえば、このバーには涼太が連れてきてくれたんだよね」
「そうだったな」
「こんなお洒落なバーを知っているなんて驚いた記憶がある」
「お子様な澄香にはちょっと早いかなと思ったけどな」
「お子様ってなによ。私たち同級生でしょ」
私が頬を膨らませて抗議すると、涼太はプッと笑った。
このバー『ダークムーン』に来たのは二回目だ。
私の二十歳の誕生日、平日だったけど涼介さんと食事の約束をしていた。
フレンチレストランを予約してくれていたらしいけど、どうしても仕事の都合で行けれなくなったと連絡があった。
涼介さんが後継者として忙しい日々を送っていたのは知っていたので仕方ないと諦めていたら『俺の代わりに涼太に行ってもらうように頼んだから』と告げられた。
涼太は『なんで俺が行かないといけなんだよ』なんてボヤキながらも私の誕生日を急遽、祝ってくれた。
そして、食事終わりに大人の仲間入りだという理由でバーに連れて来てくれたんだ。


