初恋に終わりを告げる夜


こんなことをされて惹かれないわけがない。
中一の五月、私の中で小さな恋心が芽生えた。

それから、何かと涼太と話す機会が増え、文化祭の実行委員を一緒にしてから二人の距離が縮まった。
気が付けば、お互いの下の名前で呼び合うようになっていた。
私の小さな恋心が芽生えたのと同時に、体育祭で活躍した涼太に恋をするのは私だけではなかった。
涼太の雄姿を見た女子が胸をときめかせ、"抜け駆け禁止"という暗黙のルールができて学校のアイドル的な立ち位置にいた。
それもあって告白する勇気もなく、ただの同級生という関係で迎えた中学二年の冬に許嫁の話を聞かされた。
憂鬱な気持ちのまま、許嫁とその家族との初めての顔合わせがあった。
料亭に呼ばれ、『初めまして』と微笑む涼介さんの後ろになぜか涼太の姿があった。
『どうして?』と私は驚きを隠せなかったけど、涼太は気まずそうに視線を逸らした。
そういえば、涼太の名字は"桜庭"で、よく考えたら名前も似ている。

自分の好きな人のお兄さんのが私の許嫁だったんだ。
まさかの事実に胸が切なく痛んだ。
運命の悪戯にしては酷すぎる。
食事会が終わって家に帰ると、これでもかというぐらい泣いた。

その日から、涼太と私は"許嫁の弟"、"兄の許嫁"という関係になった。

学校で会った涼太は笑いながら『兄貴との事があって複雑かもしれないけど、これからも普通に接してくれると助かる』と言ってきた。
どんな顔して会ったらいいんだろうと思っていた私は、涼太の優しさに救われた気がした。