「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
お兄ちゃんは電車で高校に通っているため、わたしよりも三十分早く家を出た。
お兄ちゃんたちも三年間歩んできた道のりを、同じように進んでいく。でも、同じようでどこか違う。それぞれが持っている頭の良さだろうか。努力量だろうか。どちらも当てはまっているだろう。でも一番は、覚悟できているかどうか。そんなような気がする。
「あっ。桜だ!綺麗だなー」
私は桜が好きだ。よく、ハラハラと舞い落ちてくる桜の花びらと捕まえようとはしゃいでいた。
毎年同じように咲く桜を、しばらくの間眺めていたときのことだった。
「おっ、志帆じゃん。おはよう」
「優音、おはよう」
優音は私の幼馴染で、私よりも一歳年上の高校一年生。小さい頃よく遊んでいた仲だ。
優音が進学した高校は私が通っている中学校の先にあるため、途中まで道は一緒。
「もう志帆も、中三になっちまったな」
「うん」
私は桜だけでなく、春も好きだ。
でも今は、嫌いになってしまいそう。
お兄ちゃんたちは高校受験を終えた春、無事第一志望校に合格し、中学校を卒業して行った。
私もそうなれたらいいが、一番行きたい高校に合格できる自信が、私には無かった。
「志帆、どうした?」
いつの間にか、暗い表情を浮かべていたみたいだ。
毎年のように見てきた桜の木を眺めていたら、ふと思った。来年の春、またこの木が満開の花びらを咲かせるとき、私はちゃんと笑えているのだろうかと。私自身が一番納得できる道に進み、笑顔で卒業できているのかと。
「なんでもない」
自分が頑張ればいいだけの話なのに、誰かに相談する勇気なんて、私は持っていない。
直接言われなくても、心の中で非難されるのが怖かった。
「なんでもないって顔じゃないけど」
「本当になんでもない。大丈夫だから」
「分かった。でも、なんかあったらすぐ言えよ」
「うん。ありがとう」
「行ってらっしゃい」
お兄ちゃんは電車で高校に通っているため、わたしよりも三十分早く家を出た。
お兄ちゃんたちも三年間歩んできた道のりを、同じように進んでいく。でも、同じようでどこか違う。それぞれが持っている頭の良さだろうか。努力量だろうか。どちらも当てはまっているだろう。でも一番は、覚悟できているかどうか。そんなような気がする。
「あっ。桜だ!綺麗だなー」
私は桜が好きだ。よく、ハラハラと舞い落ちてくる桜の花びらと捕まえようとはしゃいでいた。
毎年同じように咲く桜を、しばらくの間眺めていたときのことだった。
「おっ、志帆じゃん。おはよう」
「優音、おはよう」
優音は私の幼馴染で、私よりも一歳年上の高校一年生。小さい頃よく遊んでいた仲だ。
優音が進学した高校は私が通っている中学校の先にあるため、途中まで道は一緒。
「もう志帆も、中三になっちまったな」
「うん」
私は桜だけでなく、春も好きだ。
でも今は、嫌いになってしまいそう。
お兄ちゃんたちは高校受験を終えた春、無事第一志望校に合格し、中学校を卒業して行った。
私もそうなれたらいいが、一番行きたい高校に合格できる自信が、私には無かった。
「志帆、どうした?」
いつの間にか、暗い表情を浮かべていたみたいだ。
毎年のように見てきた桜の木を眺めていたら、ふと思った。来年の春、またこの木が満開の花びらを咲かせるとき、私はちゃんと笑えているのだろうかと。私自身が一番納得できる道に進み、笑顔で卒業できているのかと。
「なんでもない」
自分が頑張ればいいだけの話なのに、誰かに相談する勇気なんて、私は持っていない。
直接言われなくても、心の中で非難されるのが怖かった。
「なんでもないって顔じゃないけど」
「本当になんでもない。大丈夫だから」
「分かった。でも、なんかあったらすぐ言えよ」
「うん。ありがとう」



