確かに。
落ちていっていた、自分の身体が。
そのはずだった。
だけど。
どういうことだろう。
戻っている?
突き飛ばされた、松浦さんに。
その直前までいた踊り場に。
それだけではなく。
支えてくれている、凪が。
私の身体を。
「瞬間移動だね、今の。
できてよかった、本当に。
そうじゃなかったら、
凪っちと楚良ちゃん、
危なかったから」
えっ⁉
瞬間移動っ⁉
新堂くんの言葉に。
出ない、言葉が。
驚き過ぎて。
「本当によかった、無事で。
碧音ちゃんと凪くん」
彩暖ちゃんは。
驚いていない、新堂くんの言葉に。
見える、そういう感じに。
「詳しいことは、
踊り場を出てから。
早くしないと、
また動き始めてしまうよ、時間が」
えっ?
動き始める?
時間が?
どういうこと?
って。
あれっ?
気付いた、今。
再び。
止まっている、時間が。
動いていない、全く。
村瀬さんも。
松浦さんたちも。
「そうね、
和輝の言う通り、
今は踊り場を出ることだけを考えましょ。
碧音ちゃん、動けそう?」
あれっ?
ちょっと待って。
なんで。
動いているの?
彩暖ちゃんと新堂くん。
「もう動いてるよね、時間」
「たぶんね。
今頃、
いじめをしてた彼女たち、言ってるかもね、
『何してたんだっけ?』って」
今。
着いたところ。
校舎の屋上に。
そうして。
している、話を。
彩暖ちゃんと新堂くんが。
その様子を。
見ている、呆然と。
まだ。
できていない、把握が。
止まっていた、時間が。
そのとき。
動いていた、彩暖ちゃんと新堂くんは。
確か。
動かないはず。
私と凪以外の人たちは。
それなのに。
どうしてだろう。
わからない、全く。
その理由は。
「驚いたよね、
時間が止まってたときに
私たちが動いてたから」
驚いた、彩暖ちゃんのその言葉も。
止まっていた、時間が。
それなのに。
驚いていない、全く。
彩暖ちゃんは。
驚いていない。
それは。
彩暖ちゃんだけではない。
新堂くんも。
驚いていない、全く。
止まっていた、時間が。
そのことに。
「同じだと
動くことができるんだね」
同じ?
新堂くん。
それ、どういう意味?
「あのね、
碧音ちゃんと凪くんに
伝えたいことがあるの」
伝えたいこと?
彩暖ちゃんは。
何を言うのだろう。
なんだか。
してきた、緊張。
「私と和輝は―――」
「碧音ちゃんや凪くんと同じ
能力者なの」
驚いた、ものすごく。
彩暖ちゃんと新堂くん。
二人も。
私や凪と同じ能力者?
「驚いた?
凪っち、楚良ちゃん」
新堂くんは。
している、二ッと。
そんな新堂くんに。
頷いた、「うん」と。
「昨日、
楚良ちゃんと会ったでしょ、本屋さんで」
「うん」
「実は、
偶然じゃないんだ、あれ」
「えっ?
そうだったの?」
偶然じゃない、って。
どういうこと? 新堂くん。
「楚良ちゃんに
近づくため」
「えっ?
近づくため、って」
わからない、まだ。
それだけの情報では。
「和輝、
そんな言い方だと怪しいよ。
碧音ちゃん、戸惑ってる」
「わかってるよ、彩暖。
きちんと説明するから」
どんな内容だろう。
新堂くんの説明。
「うん。
私も和輝と同じ。
きちんと説明する、
凪くんと碧音ちゃんに」
説明?
彩暖ちゃんも?
何のだろう。
「実は私もなんだ。
凪くんとCDショップで会ったの、
偶然じゃないんだ」
「えっ?」
彩暖ちゃんも?