高校の友達の、良太からメールが届いた。
仕事終わりにトークルームを開くと、不謹慎にも口元が緩むような内容が映し出された。
『早柚と別れた。他に好きな人ができた』
『喜んでくれてたのに、ごめん』
吹き出しがふたつ、縦に並んでいる。
喜びと悔しさと、余計なお世話かもしれない心配が同時に心をうごめく。
なんだか、良くないことが起こるような、そんな予感がした。
どうせ当たらない。こういうのは、九割外れる。
こんな真夜中にいきなり、同級生から電話が入ったらきっと早柚も驚くだろう。不審に思うかもしれない。
なにより、もうすぐ午前零時を回る。高校を卒業して就職した早柚は、明日も仕事かもしれない。
会いたい。声を聞きたい。フリーになった今が、振り向いてもらうチャンス。
心配の中にも、そんな下心があるのも事実で。とりあえず一度、睡眠を挟んで冷静になることにした。
明日。クリスマス。電話してもいいだろうか。
良太には会っていたけど、小学生のころからのほとんど幼なじみのような存在の早柚には、高校を卒業してからの五年間、一度も会っていない。
良太に無意識のうちに気をつかっていたのもあるだろうし、会って変に恋心が顔を覗かせるのを避けたかったのもある。
好きだから、変に意識してもらおうとして好きな人の今の幸せを壊したくなかった。
でもこうして考えたら、綺麗事だったな。
ガンガンアピールすればよかった。早柚の性格上、一途に相手のことを思って、その人をすごく大切にすることはわかっているから、結果好意が俺の方に向くことはないのだけど。
今、どんな感情が早柚の心を占めているのだろう。
頭の中は、そのことでいっぱいだった。