高速バスターミナルの近くにあるホテルビュッフェが同窓会の会場だった。

県庁所在地にも関わらずこざっぱりしているこの街は人口減少のダメージをしっかり受けているようだった。
高速バスにゆられて3時間。

同窓会の後は適当にネットカフェで過ごして朝一番
の便で帰るつもりだった。
実家には連絡していない。帰るといえばよろこんで受け入れてくれるし、私の使っていた部屋すらそのままにしてくれているとのことだけど、帰るのは気が引けた。
なぜかは明確に言語化できないけど。

私は先生に会えたらもう、帰るつもりだった。

だから同窓会も途中からこっそりと会場入りし、先生と一杯、酒を交わせれば8000円の参加費と7800円の高速バス代の元は取れたも同然だった。

会場に向かう前に、商業ビルの一回に埋め込まれた
コンビニで安い缶チューハイを買って、一気飲みする。
甘い、人工的ないちごの匂いがした。本当のいちごはこんなに匂わないし甘くない。偽物だと分かっているのに、いちごといえばこの匂いを思い出す。
私の記憶の中の先生ももしかしたら偽物で、今日本物に会ったとき、解釈違いを起こさないでいられるだろうか。このいちごみたいに納得できるのか。それは分からなかった。


先生、何を飲むのか。
ウィスキーか、はたまた日本酒か。

学生時代では聞けなかった事を聞くために、また私はもう1缶、チューハイを開けた。

繁華街も近いからか、コンビニ前で、缶チューハイをグビグビ飲む女を誰も気にしていなかった。

もうすぐ梅雨が明ける。
昨日までの長雨が、目の前のくぼんだアスファルトに水たまりを作っていた。

それらを可憐に避けながら目の前をキャバ嬢やホストの同伴出勤が過ぎていった。