「はい、今年はこっちの方角ね」
私と奏多は同じ方向を向いて手をあわせた。
今日は節分、恵方巻きを夕食に食べる。
「巻き寿司なんてよく作ったなぁ、唯菜はハーフにする?」
1本とハーフサイズの恵方巻きを2本ずつ用意した。
「1本食べる!」
「大丈夫かよ、食えんの?」
「お腹減ってるしいけるんじゃないかな〜」
「じゃあ、食うか」
「うん、いただきまーす」
ぱくっ!
もぐもぐ……
「…………」
「ワハハハ」
ん?2人は顔を見合わせた。
奏多は恵方巻きをくわえたまんま
「んー」
と指を立ててシーという仕草をする。
一方私はわざとらしく笑う。
「あはっ、ハハッ」
私は巻き寿司を口から離した。
「何で黙ってんの?」
「んんんー」
彼は話さない。
どんどん巻き寿司が短くなっていく。
「ハハッ、おかしい〜口いっぱいだよ」
そのうち彼は1本を食べきりお茶を飲んだ。
「あー、食った」
「私はまだーハハッ」
「何で黙って食わねーの?」
「何で黙って食べてんの?」
『 えっ!?』
お互い顔を見合わせる。
「恵方巻きって黙って1本食い切るんじゃんかー」
「違うよ笑いながら食べるんだよ」
「何だよ、正反対じゃん」
「地方によって違うってことかな?」