翌日

 朝を告げ知らせる雀の鳴き声。

 ちゅんちゅん……ちゅんちゅんちゅん……

 俺は現在キッチンのあるダイニングルームにいる。

 部屋が狭すぎて、妹はベッドで、美人姉妹は俺がいつも寝ているところへ。

 そろそろ引っ越しを真剣に考えなくてはならない。

 早苗さんは、自分の家で一緒に住んでも大丈夫だと言っているけど、それはちょっと男として別の試練が待っているような気がしてならない。

 けれど、みんなの安全のためなら同居した方が遥かに効率がいい。

 友梨姉と奈々は普通に俺の家に遊びにきているが、頭のイかれた連中が二人を狙わないとも限らない。

 うん。

 やっぱりどう考えても同居か。

 そんなことを考えながら俺は目を開ける。

「寒い」

 そう。

 布団もなしに枕だけで夜を凌いだ。

 まあ、男だし、へっちゃらだ。
 
 それにしても昨日は散々だったな。

 特に奈々がやばかった。

 3人の後に風呂に入ったんだが、奈々がいきなり入ってきて俺にちょっかいをかけてきた。

 俺の背中を突いたら、急に息を荒げて俺の筋肉を必死に揉むものだから本当に理性が飛ぶところだったな。

 途中で理恵と友梨姉に助け舟を出してもらえたからなんとかなったけど。

 一人になって邪念を取り払う時間が欲しいが、俺にはみんなを守るという使命があるので、それもままならない。
 
 つまり、邪念を捨てるには今だ。
 
 滝行をしている修行僧の気持ちになるんだ。

「んん……」

 俺が目を瞑って瞑想に耽っていると、右腕に極上の柔らかい感触が伝わってくる。

 俺は再び目を開けた。

 そしたら、

「ん……」

 短いパンツにタンクトップ姿の奈々が俺の腕にくっついた。

 くっつき虫め……

 俺がため息をつきながら戸惑っていると、奈々と同じ格好の友梨姉と寝巻き姿の理恵が仲睦まじく手を繋いで寝ている。

 本当に仲良さそうなだ。

 理恵にとっての友梨姉はいわゆる精神の安らぎをもたらす癒し的存在だと思う。

 俺は理恵の兄だ。

 性別が違う分、やっぱりわからないところや察してあげられないところも多々あるのだ。

 そんなところを友梨姉が埋めてくれている。

 俺が躑躅家の家族になると決めたのは、最高の選択だと思えて頬が緩む。

 嬉しい気持ちが湧いてくるが、一方で

「ていうか……」

 疑問も渦巻いてくるわけで

「なんでみんなここにいるんだよ……」

 3人は布団と枕を持ってきて、ここで眠っていたようだ。

「俺がここにきた意味ないだろ」

 奈々の柔らかすぎる体は俺を離してくれそうにない。

 こうなったら諦めるしかない。
 
 特に、奈々に関しては下手な抵抗なんかやっても返って逆効果だ。
 
「はあ……」

 俺はため息混じりに苦笑いして、スマホを握る。

「スパチャ……えぐい額になってる……」
 
 そう。

 昨日は謎の会長さんたちが争いながらすごい額を投げてきたんだ。

 広告収入も順調で、チャンネル登録者数の伸びもいい。

「引っ越すか。ここはセキュリティーがあますぎるし」
 
 俺がいる間は安全かもしれないが、やっぱりこの倒れる寸前のボロアパートでは心もとない。

 でも、俺と理恵の思い出がいっぱい詰まった場所だよな。

 そんなことを考えながら、無意識のうちにニャフージャパンを開いた。

 今日はどんなことが話題になっているんだろうか。

 必死に奈々のおっぱいの感触に耐えて液晶を見る俺。

 俺は目を疑った。

『日本ダンジョン協会会長、何者かに襲われ死亡』

「え?」