これは答えないわけには行かない。

 名無しさんが100万円をくれたことで、注目が集まっているんだ。

 でも、どう返答すればいいのか分からない。

 この100万を超える視聴者の中には、きっと友梨姉と奈々のファンもいることだろう。

 だが、言葉というものは誤魔化せば誤魔化すほどボロがでるものだ。

 俺はさがくんみたいに口が上手いわけでもなければ、戦闘以外だとコミュニケーションが得意ではない。

 俺の気持ち。

 俺は二人とどんな関係を築きたいんだろう。
 
 二人は、二人を取り巻く人々は俺に何を言ってきたのか。

 それがヒントになるかも知れない。

「名無しさん、100万円をありがとうございます!俺は……もし、あの二人がまた危険な目に遭いそうになったら、助けたいですね……二人がそれを望めばの話ですけど……あははは。それが今の俺の気持ちです」

 むず痒くなって、俺は後ろ髪をガシガシしながらカメラから顔をそらした。

 そしたら

『名無しさんが100万円を投げました』
『名無しさんからのメッセージ:初心忘れずべからず』

「……」

 納得してくれたかな。
 
 俺は安堵のため息をついた。

 ていうか、200万円を投げれる人って一体どういう人なんんだろう。

 と、思いを馳せていたら、いきなり人々がスパチャ投げまくってきた。

『xxさんが1万円を投げました』
『ooさんが2万円を投げました』
『aaさんが5000円を投げました』

 スパチャのメッセージは『さすがでんこ様!』とか『他のイケメン配信者みたいに出しゃばんないところが好き』とか『真面目なでんこ様、妹の学費の足しにして』とか『さがくんみたいなクズから二人を守って!』とか実日様々だ。

 そして

『でんこ様、いい人なのはわかっているけど、二人のファンとして、あなたを見守ってますから』

 うん。

 見守るか。

 監視の言い間違いじゃないだろうか。

 なぜかグッと疲れが出てきた。

 人気配信者はみんな、こんなプレッシャーに耐えながらやってんのか。

 だとしたらすごいな。

 友梨姉も奈々もすごい。

 もうこんな形の配信はやりたくないな。

 俺は作り笑いして言う。

「スパチャのメッセージ、肝に銘じます。あと、こんなに投げてくれて、本当にありがとうございます!えっと、今日はテスト配信なので、そろそろ終わりたいと思います」

 すると

『え!?もう?』
『せっかくでんこ様のライブ見れたのに』
『もっとやって!』

 みたいな反応が流れる。

「次からはSSランクのダンジョンでモンスターを倒すライブをやりますので、よろしくお願いします!」

 いうと

『待ってる!』
『ライブ楽しみにしてます!』
『頑張って!』

 視聴者の反応を見て安堵する俺は、手を振った。

「じゃ、またお会いしましょう!」

 ライブを切ると、一気に疲れが押し寄せてきた。

「はあ……」

 今まで一人で狩りばかりして大勢の人と話すことは無かったからすごく緊張した。

 妹と躑躅家の人と話すのとはレベルが違う。

 そんなことを思っていると、誰かが俺に電話をかけてきた。

『躑躅奈々』

 今彼女らは学校にいるはずだ。

 なんでかけてきたんだろう。

 もしかして事件?

 俺は早速電話に出た。

「もしもし」
『祐介、ライブ初心者って感じしてめっちゃうける』
「学校いんのにライブ見てたのかよ」
『ふふ、お姉ちゃんも見てるんじゃないかな?理恵ちゃんも』
「……」

 俺は奈々に文句を言いつつも心のどこかで安心していた。

 しかし、奈々はそんな俺の心が荒立つようなことを言う。

『私たちの関係を聞かれた時、もっとグイグイ言えばいいじゃん!例えば、奈々の胸をいっぱい揉んでますみたいな』
「おい、それ言うと、お前のファンに殺されるだろ。ていうか、揉んでないっつーの!」
『あはは!!そうね。ファンがいるんだよね。でも、私のファンが全部かかってきても祐介が余裕で勝つでしょ?』
「そんな問題じゃないだろ」
『それはそうとして、祐介、今日は予定ないよね?』
「なんで知ってるふうに言ってんだ」
『理恵ちゃん、いい子だから』
「……」
  
 理恵よ、学校で一体俺の何を言ってんだ。

 げんなりする俺。

 理恵はスマホ越しに、妖艶な声で言う。

『ねえ、今日一緒にあそぼ?私とお姉ちゃんで配信のこといろいろレクチャーしてあげる』


追記


2回戦始まります