――見とめてしまった。
 完璧を繕う君が落とした、一片(ひとひら)の切なる花の綻びを。

 ――ああ、だから、
 そして、想う。二度とは還らないであろう君のことを。

 ――……君は、あんなふうに、僕の前から消えたのか。
 僕らに言の葉が残されたのは、きっと、君の嘘を生かすためだ。

 ――それならば、
 君がため、今際の際に吐かれたその嘘に、僕は未来永劫の忠誠を誓おう。

 この物語は、もう戻らない眠りの君へ。
 僕の愛は、隣に眠る、明日を花笑む明るい君へ。

 ――僕も、君も、所詮は誰かの物語の下僕(しもべ)だ。