サガリバナは、一夜限りで咲く花だという。
本作はワンナイトというテーマで書かれた短編小説だが、儚く咲くサガリバナのように短い恋のあり方を、通話アプリでの出会いで表現しているのが面白い。
ネット恋愛をする機会も増えた現在、通話アプリでの出会いという恋愛のあり方は読者にも受け入れやすいし、通話アプリで匿名の相手と話したこともある人も少なくないだろうから、共感しやすいテーマ性だとも思う。現実の恋愛に失敗したキャラクターたちが、ネット上での出会いに夢を抱くのも、感情的に理解できるところがあり好感をもつことができた。
着眼点の勝利といいたい作品だ。
通話アプリで出会った二人は一夜限りで別れることになるが、徒花のような切なさの中に希望もあるように思えたから、読後感は前向きなものだった。
優しい恋の開花は、一夜で終わるのだろうか。
夢のつづきはきっと、花言葉に託されている。