当然土はどこも水溜まりになっていて,私のジーンズがふれているアスファルトも,濡れている。
じんわりと人体にまで湿って,最悪な気分だった。
唯一の救いは,この光景を誰も見ていなかったって事だけ。
私が彼に身体を許したのは,彼が私の恋人だったから。
彼の事が好きだったから。
そして,彼が私の事を好きだって確証があったから。
なのに,最後の最後で愛の無い行為に付き合ってしまった。
自分が途端に汚い存在に感じる。
情けない。
指先が震えて,それでも立ち上がろうとした時。
誰かが,音をたてて私の前に立つ。
かさりと袋の音がするから,きっとさっきのコンビニから着いてきたのだろう。
……着いてきたって,嫌な感じ。
きっと方向が同じだっただけなのに。
「大丈夫ですか」
大丈夫だから,放っておいてほしい。
お願いだから,私を見ないで,一刻も早く帰ってほしい。