どうしよう,せめて今日だけは戻りたくない。

だから,またバイブ音と特徴的な着音がしたけど,私は気付かないふりをして。

街頭だけが頼りの夜の住宅街を,たった1人でさ迷い続けた。

雲って霞む星々を見つめて,鼻をすすりながら堪える。

誰が見ているわけでもないのに,泣こうとは思えず,ただ静かに堪えた。

こんなに意固地になったのは,見栄っ張りで,直ぐに恥を感じるようになったのは。

どうしてだろうか。

素直な自分が好きだったのに,今も見ていない誰かを想像して,隠してばかりになったのは。

社会や変わっていく周りを痛感したからかもしれない。

同じ様に,彼だって沢山の自由を手にしたから,だから私はこんな目に遭っているのかもしれない。



「あーぁ。色々さいあく,だなあ」



少し気を抜くと,喉がふるえる。

悲しくない,悲しくない。

苦しくない,怒ってない。

涙が出るのは,誰かに分かってほしいと思うからだ。

助けてほしいと願うからだ。

そんなことないよ,私は大丈夫。

だから,涙なんて落ちるはずがない。

そう,頑張って心を落ち着けるだけ。

ふいに強い光が目に入って,顔をあげる。

24時間営業の,コンビニだった。